『わたナギ』に漂う 要素は豊富だけど 「深くは追求しない」ライト感
“ちょうどいい”で成功したドラマは他にもある。火曜22時に放送している『私の家政夫ナギサさん』だ。多部未華子演じる仕事は出来るが家事が全く出来ないアラサー女子・メイが、大森南朋演じる“おじさん”家政夫・ナギサさんに出会い、散らかった部屋や人生をも整えていく。『逃げ恥』の再放送から上手くスライドした『わたナギ』は初回で視聴率14.2%を記録し、右肩上がりで数字を伸ばしていった。
『わたナギ』には様々な要素が詰まっているが、どのテーマも深くは追求されない。例えば、メイは母親(草刈民代)からの過度な期待に長年悩まされていたのだが、娘たちに同じ苦労を味わってほしくない親心から口煩くなってしまっただけ。おじさんのナギサさんが「お母さんになりたい」と話していたのも、お母さんのように安心感を与えられる存在になりたいとの意味で、現代のジェンダー観に訴えかけるような深い意味は特にない。同僚の陶山薫(高橋メアリージュン)とライバル会社に勤める田所優太(瀬戸康史)との三角関係も、陶山がすんなり身を引いたおかげであっさり終わるのだ。
『逃げ恥』のような社会性を期待すると物足りなさを感じるかもしれないが、あえて深入りしないことで視聴のハードルをぐっと下げ、あまりドラマを見る習慣がないライト層にも見やすい仕様になっている。ネガティブな要素が少ないのも視聴を継続しやすいポイント。火曜22時という時間帯も、主演の多部未華子も、大きなぬいぐるみのような大森南朋のフォルムも全てが“ちょうどいい”に繋がっている。
2020.09.09(水)
文=明日菜子