悔しさをバネにすることで 頑張れるようになった

 仲のいいプロデューサーから「やりませんか?」と声をかけられ、「やります」と返事をした時は、自分が主演だとは知らなかった。

  「気付いたら……主演でした(笑)」と、仕事を受けた経緯について話す時も、気負いや気取りは全くない。かといってただナチュラルなだけではなく、歌い手のような心地いい緩急と、座長としての慎重な言葉選びがある。

 そうして、悔しさをバネにすることは誰にでもあることじゃないかと彼は言う。

 「僕自身、27歳ぐらいまでは、悔しい思いはいっぱいしていても、それをバネにはできなかった。人と自分を比べて、嫉妬したり、焦ったり、落ち込んだりするだけでした。

 『売れるって何だ』『売れたら偉いのか?』とか、心の中で反発することしかできなかった。でもある時、その時間がもったいないなと思ったんです。

 正面切ってではなく、陰でコソコソ何か言ったり、ウジウジしたりするのが、ある時期を境に大嫌いになりまして(笑)」

2020.07.23(木)
文=菊地陽子
撮影=MURAKEN
スタイリスト=岡部美穂
ヘアメイク=大橋 覚

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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