CREA本誌で「小西康陽の音楽の新スタンダード100」を連載中の、音楽家・小西康陽さん。

 かつて、バンド「ピチカート・ファイヴ」のメンバーとして渋谷系を牽引し、解散後もDJやプロデューサーとして活躍。同時に随筆家としての一面も持つ小西さんの、音楽、本、映画、旅、恋愛などについて軽やかな文体で綴ったコラムは、音楽ファン以外からも支持されています。

 自粛期間中、テレワークしながらエッセイや日記など個人的な文章に心惹かれていたCREA編集部の音楽担当。そこで小西さんのコラムの魅力を改めてご紹介します。


「どこから読んでも大丈夫」で 雑誌みたいな楽しい本

 初めて読んだ小西さんのコラム集は、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008』(朝日新聞社)。

 大学生の時にアルバイトをしていた書店のロングセラーだったので、いつも目立つ場所に平積みされており、いつしか気になって手に取ったのがきっかけでした。

 この本は、小西さんが雑誌に寄稿したコラムやレコード評、インタビュー、映画レビュー、日記、あるいは個人的な覚え書きのような短い文章がたっぷりと収録されている“ヴァラエティ・ブック”。

 “ヴァラエティ・ブック”とは、通常であれば一段または二段のテキストでページが組まれるところ、一段、二段、三段、四段と、ページごとに変則的に組まれ、内容的にもさまざまな種類の文章やビジュアルページから構成されている本のことを言うそうです。

 この“ヴァラエティ・ブック”というもの自体の魅力については、『ぼくは散歩と雑学が好きだった。』の前に刊行されたコラム集『これは恋ではない 小西康陽のコラム1984-1996』(幻冬舎)でも触れられていますが、つまりはまるで雑誌のように、「どこから読んでも大丈夫」な楽しい本なのです。

 本を開いて目次を見ると、「身だしなみに無頓着であることが許されるのは。」「ぼくが京都のホテルに何日か泊まっていたときのこと」「誰かの人生を2時間の映画にするということ。」など、ふと気になってしまうタイトルの数々が。

 私は一度通読したあと、再読する際は、その時々の気分にフィットするものをピックアップするという贅沢な読み方をさせてもらっています。

2020.06.24(水)
文・写真=CREA編集部