台湾で、地域の人々に長年愛されている、レストランやスイーツのお店。そんな、ストーリーのある名店を2軒ピックアップ! お店や料理にまつわる、素敵なストーリーを語ってもらいました。

 今回は、パイナップルケーキやクッキーが好評の手天品社區食坊。お母さんたちが立ち上げた店「手天品」のお菓子は、甘い香りが近所の人たちの心を摑み、瞬く間に人気店に。

 365日家族のために食事をつくる母の優しさと信念が、特別な調味料となっていました。

» ストーリーのあるごはんを見る


おいしくて安心できるお菓子を身近に。その思いが始まり

手天品社區食坊(ショウテェンピンシャーチューシーファン)

「わざわざ買いに行ったよ。噂のパイナップルケーキと、うずまきクッキーを」

 そんなみやげ話を台湾旅から帰ってきた人からよく聞く。店の名は「手天品」。並ぶのは飾り気のないセロファンに包まれたシンプルなお菓子。

 ここのパイナップルケーキのファンだという台北在住コーディネーター・青木由香さんは「まわりのクッキーのレベルが高く、しっとりとサクッが共存している」と教えてくれた。

 うずまき模様の〈如意クッキー〉は、緑豆のお菓子をつくるときに余った生地を使って生まれたもの。シナモンの香りが後をひく素朴な味わいだ。

 手天品が誕生したのは2002年12月。立ち上げたのは日本の生協のような団体、台湾主婦連盟生活連合合作社(以下、主婦連盟)に所属していたメンバー5人。

 きっかけは宜蘭のバス旅行中に「おいしくて安心できるお菓子ってないよね」という何気ない話から、自分たちでつくろうと動いた。

 最初はシフォンケーキやプレッツェルなど3〜4種類を主婦連盟の店で販売していたが、2年ほど経った頃に今の場所に店舗を構える。

 お菓子以外にパンやベーグルなど商品を広げ、使うのは無漂白の小麦粉、放し飼いで育てた鶏の卵など、質のいい素材。添加物はもちろん入れていない

 「いいにおいがして」と香りにつられて入ってくるお客さんが増え、評判は口コミで広がっていった。

2020.05.13(水)
Photographs=Kiyoko Eto
Coordination=Yuka Aoki
Cooperation=Taiwan Tourism Bureau

CREA 2020年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

おいしい、台湾。

CREA 2020年5月号

その一口できっと笑顔
おいしい、台湾。

定価820円

台湾を訪れると、いつも地元の人のあたたかさ、おおらかさに心癒されます。その笑顔の秘密は、日々の豊かなごはんなのかも。あつあつの小籠包に滋味深いお粥や豆漿、心ときめくかき氷とふわふわの豆花。おいしいものは元気をくれる。そんな当たり前だけど大切なことを思い出させてくれる旅をご案内します。