やっぱりキンゾーさんのお菓子が食べたい!

 京都に出かける度に、足繁く通っていたパティスリー「オ・グルニエ・ドール」。行列が絶えない人気店でしたが、オーナーパティシエの西原金蔵さんは「65歳で閉店する」と有言実行。

 2018年に閉店してしまいました。店舗は「ナンポルトクワ」という名前で息子さん夫妻が継いでおられたり、西原シェフの元で修業したパティシエ達も、市内のあちこちで良いお菓子を作っておられます。

 でも、やっぱり「キンゾーさんのお菓子が食べたい!」

 そう想い続けていたら、以前、お菓子教室だった場所で「コンフィズリー エスパス・キンゾー」が、2019年6月、ひっそりオープンしたのです。

 店内のショウケースに並ぶのは、箱入りの「パート・ド・クルスティヤン」。きらきら輝く、一見、和菓子の「琥珀糖」のようなお菓子。

「コンフィズリー、砂糖菓子は、ずっとやりたいと思っていたんです。

 フランス・ミヨネーのレストラン、アラン・シャペルでパティシエとして働いていた時、パート・ド・フリュイを作っていたら、シャペルさんに言われたんです。

 表面がパリッと割れて、中が軟らかい繊細なお菓子ができないかって」

 それが、ずっと頭に残っていて、ことあるごとに色々作ってみてはいたと西原シェフは言います。

 昨年、京都商工会議所から食事会のデザートの監修を依頼され、プティフールとして試作したら「思っていた食感のお菓子ができた」とにっこり。

 その「パート・ド・クルスティヤン」は、薄い氷で閉じ込めたような見た目で、噛んだ瞬間、パリッと表面が割れると、中身はジュレ状で、つるん、ぷるんと軟らかい。

 そこに、ゆずのマーマレードやラムレーズンが入っていて、噛むと香りが弾けます。アーモンドや松の実のカリッとした食感も楽しい。黒豆や蒸し栗を食べると、日本人好みの和の世界。

 ピラミッド型のココアとオレンジは、フランス菓子のイメージ。フランボワーズのパート・ド・フリュイとピスタチオをのせたもので、まさに和仏折衷。

 「水尾のゆずや大原の赤紫蘇、丹波の黒豆、実山椒など、季節の京都産の素材も使います」と西原シェフ。自身のスペシャリテ、チョコレートの「ピラミッド」を彷彿とさせる形の一品があるのも楽しい。

 和菓子でもフランス菓子でもない、西原シェフオリジナルの砂糖菓子。繊細な食感で、砂糖の甘さだけでなく、口の中に香りや風味が広がります。

 紅茶にもコーヒーにも、さらに日本茶にもお酒にも合わせられるお菓子。常温で持ち歩けたり、保存できるのも大きな魅力で、手土産にもぴったりです。

 これらの小さなお菓子だけを販売するコンフィズリーの店は、西原シェフとマダムで、土曜と日曜だけ営業されています。

2020.04.12(日)
文・写真=そおだよおこ