レモンが絶妙な「鳥かわぎょうざ」

 まず、女将イチオシの「鳥かわぎょうざ」(600円)が登場した。手羽餃子のように骨が入っているのかと思ったが、そのままガブッと食べることができる。

 下味が付いていて、レモンをかけていただくとなかなか旨い。

 先代の大女将は、かつて神田界隈でお店を始め、その後、新橋の烏森に移転し、さらに大井町に落ち着いて「釣瓶」という小料理屋を営んでいたそうだ。

 女将はそこで修業し、対面に今の「お菜処 わらじ」を開店し、今に至っているそうだ。

 確かに烏森にある小料理屋に雰囲気が似ている。女将も自分が子供の頃の、活気があった華やかな時代の神田や烏森のことをよく覚えているそうだ。

 神田駅南口駅前にあったスーパーマーケット「ピンクベア」の話などで、先輩社長と話が弾んでいた。

「カレージャガ」「〆さば」……どれもセンスがよい

 2品目の「カレージャガ」(600円)が出てきた。ポテトフライをカレー粉と植物オイルで絡め炒めたもので、これもなかなかよい。3品目は厚切りの「〆さば」(700円)だ。

 途中、「切り干し大根」や「らっきょうと高菜漬けときのこの煮付け」、麹の利いたほんのり柚子が香る「塩辛」などをいただく。どれもセンスがよい。

 「湯どうふ」(600円)も出汁が利いていて上品な味である。

 雑談しながら、何気なく正面の看板メニューを眺めていると、麺類のメニューが多いことに気が付いた。

 「ざるそば」「かけそばうどん」「焼うどん」「焼きそば」「温めん」などなど。聞くと、女将さんは山形県寒河江(さがえ)のそばに惚れ込んでしまったそうで、それ以来シメのそばや麺のメニューが増えてしまったそうだ。

 そこで、先輩社長はシメに「焼うどん」(700円)、自分は「かけそば」(600円)を注文した。

2020.03.16(月)
文・撮影=坂崎仁紀