飲み屋のシメっていうのは印象に残る。それほど凝ったものでない方がいい。これが旨いとまた行きたくなる。
四谷三栄町の「たん焼 忍」は「茹でタン」が有名だが、シメの「焼きおにぎり」は必ず注文する。
神田須田町の渋いおでん屋「なか川」の「かけめし」。
脂身の多いマグロ一切れ、ごま、わさび、海苔、三つ葉が白飯にのって関西風のおでんのつゆをかけたもの。シメにしみわたる旨さ。
中目黒の山手通り沿いに移転した「藤八」には「素うどん」がある。「自家製はんぺん」や「腸詰」などを食べた後のシメによく頼む。
つゆが関西系の透き通った昆布出汁で、海苔や明太子をのせてもうまい。
「飲み屋のシメのそば」との出会い
「飲み屋のシメのそば」っていうのもある。
しかし、手打ちそば屋ならシメは当然そばであるし、自分はシメに立ち食いそば屋へ寄ってしまうので、「飲み屋のシメのそば」はあまり印象に残っていなかった。
先日、そんな「シメのそば」がうまい飲み屋を偶然に発見した。
時節柄、満員電車を避け時差帰宅するために大井町駅で、編集会社の先輩社長と下車した時のことである。
少し散策してみようということになり、駅西側の立会道路を進んでいくと、左手に「お菜処 わらじ」という店を発見した。
夕方6時前。引き戸を開けると店は女将さんひとりだった。
2020.03.16(月)
文・撮影=坂崎仁紀