いい呼吸で
心と体の調子もアップ

 今この瞬間も、無意識に呼吸をしている私たち。

 「無意識に酸素を吸っているだけでなく、感情を作っている脳の活動も無意識の呼吸のリズムで動いています。

 呼吸が変わると感情も変わる。感情が変わると呼吸も変わります。呼吸は人の情動をコントロールする身近な手段です」と話す本間生夫先生は、呼吸生理学の分野から呼吸を研究してきた。

 深呼吸やヨガ、マインドフルネスなどで呼吸法を実践している人もいるだろうけれど、これらは意識して行う随意呼吸で、本来の呼吸機能を司るのは、無意識に行われている代謝性呼吸と呼ばれるものだそう。

「1回の呼吸で肺に入る空気の量は約500ミリリットル。体内に酸素を取り入れ、エネルギーを生み出し、二酸化炭素を排出するというエネルギー代謝の調節システムを自動的に行っていますが、随意呼吸のときは、このシステムは作動しないのです」

 私たちは、1分間に平均15回、1日だと約2万回、無意識で呼吸をしている。

「不安を高めやすい人ほど呼吸が速く、のんびりしている人は呼吸がゆっくりしている傾向があります。

  最近は、浅くて速い呼吸の女性が多いですね。仕事や子育てなどで時間に追われ、忙しい生活になってしまっているからでしょう。浅く速い呼吸の人は、呼吸筋をうまく使ういい呼吸ができていない状態です」

 肺の周りには、肋間筋をはじめとする呼吸筋がある。これらの筋肉が休みなく収縮運動を行い、肺は膨らんだり、縮んだりできる。

「呼吸筋の機能は、20代半ばから少しずつ衰えていきます。加齢とともに筋肉の弾力が失われ、胸がかたくなっていきます」

 しかし呼吸筋は筋肉だから鍛えることができる。今回紹介したストレッチは、本間先生が考案した呼吸筋ストレッチのダイジェスト版。

 伸ばしながら収縮させると弾力性がアップする筋肉の性質から考えられたストレッチだ。

「眠れない、落ち込みやすい、気が散って集中できないなどなんとなく不調を感じているときは、呼吸のリズムが乱れています。この呼吸筋ストレッチを行うことで、深くゆったりした呼吸に変換してくれるのです」

 呼吸筋ストレッチは、いつでもどこでも1日に何回行ってもいい。背筋を伸ばしたいい姿勢を心がけながら、とにかく毎日行ってほしいという本間先生。

 そして、いい呼吸が身についたら、体のエネルギー代謝もアップ。いつのまにか、痩せやすい体になっているうれしい効果もあるのだとか。

2019.09.28(土)
Text=Kaoko Saga(Lasant)
illustration=Hiroko Takashino(asterisk-agency)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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