観る人に向かって
シュールな鶴が飛んでくる
次の展示エリアに進むと、若冲と同時代の江戸中期に活躍した円山応挙やその高弟・長澤芦雪、俳人で文人画家の与謝蕪村、郡山藩士で文人画家の柳沢淇園(きえん)などの作品が展示。
縦長にデフォルメされた富士山と、遥か遠くに浮かぶ真紅の太陽が描かれた、長沢芦雪の《富士越鶴図》は、十数羽の丹頂鶴が列をなし、グングンとこちらに向かってくる様子がシュールで、列から少しはみ出た一羽の鶴の存在が、笑いを誘う。
「鶴の首はいずれもZ型に描かれていますが、このように首を曲げるのは、サギの飛び方です。実際のツルは首をまっすぐにして飛ぶのです」
当館の学芸課長、岡田秀之氏は実際の鶴との違いについて語る。
若い女性が、結ったばかりの髷の様子を合わせ鏡で確認している姿を描いた作品は、近代美人画の大家・上村松園の《鴛鴦髷(おしどりまげ)》。
鴛鴦髷とは、おしどりの雄の尾羽の形をイメージした、幕末から明治にかけて若い女性の間で流行した髪型だ。
鳥だけでなく、鳥をイメージさせる作品も展示されており、このほか、着物や帯の柄に鶴の文様が描かれている美人図など、“トリ探し”がゲームのように楽しめる作品が用意されている。
殿様大名のよう⁉
大広間で気分は「絶景かな」
2階に場所を移すと、そこは開放感あふれる120畳の大空間!
小倉百人一首の競技カルタの大会も行われるという「畳ギャラリー」には、明治から現代に描かれた作品が展示されている。
さらに、全長32メートルの板間の廊下からは、渡月橋を遠景に、大堰川(おおいがわ)を眺めることができる。
春は桜や新緑、秋は紅葉、冬は冠雪も楽しめる、絶景ポイントだ。
2019.08.15(木)
文・撮影=景山由美子