美しい鶴やかわいい鶏
名画の“鳥”に出会う
京都の奥座敷として人気のエリア、嵯峨嵐山。渡月橋や竹林などの散策が有名でいつも多くの観光客でにぎわっている。
その風光明媚な地を静かに堪能できる場所としておすすめなのが、2018年にリニューアルオープンした美術館「嵯峨嵐山文華館」。
今、“鳥”をテーマにした「いろトリどり 描かれた鳥たち」という、耳にするだけでちょっとワクワクする展示会を開催中だ。
![かわいい鳥たちが大集合。“色とりどり”と“鳥”を掛けたタイトルが楽しい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/6/-/img_e6a7282e1343b24f7edbb45fd3f534c6138871.jpg)
![「小倉百人一首殿堂 時雨殿」がリニューアルし、2018年11月に「嵯峨嵐山文華館」としてオープン。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/e/-/img_be5f382742edc4b25e992c06284fb3be174613.jpg)
![2階の畳ギャラリーは見たことのない120畳という大空間。名作をゆった~り鑑賞。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/b/-/img_0bb009f324f9c47ba884a43677a1d228108158.jpg)
あの伊藤若冲の名作を
並ばずに鑑賞できる
江戸時代から現代までの61作品が、前期(~2019年9月9日[月])、後期(2019年9月11日[水]~10月20日[日])の二期に分けて展示される。
まず、1階展示会場で最初に出迎えてくれるのは、近年、絶大な人気を誇る江戸中期の天才画家・伊藤若冲の水墨画と彩色画だ。
![伊藤若冲の水墨画と彩色画、若冲が影響を受けた佚山(いつざん)の彩色画が並ぶ。前期の9/9まで展示。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/-/img_193ce5004b9fe3aead6e1ae763c66acc62273.jpg)
若冲の水墨画は、竹の先がくるっと回った表現が自由でのびやかな《竹に雄鶏図(ゆうけいず)》に始まり、「筋目描き」と呼ばれる墨のにじみの効果を生かした描法で、鷹特有の“ガッチリ&フワッ”とした質感を見事に表現した《鷹図》。
そして、若冲が最晩年の80代に手掛けた《双鶴図(そうかくず)》が並ぶ。
![左から、伊藤若冲《竹に雄鶏図》《鷹頭》(ともに18世紀)、《双鶴図》(1796年)。前期の9/9まで展示。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/f/-/img_9fe5a5a034e0c58f031561ae2fd7848275683.jpg)
絵の具を使わず、墨の濃淡だけで表現しているが、鳥の持つ生命感や、ツヤツヤとした質感を表現しているのは、さすが若冲!
彩色画《紫陽花白鶏図(はくけいず)》は、本展覧会のなかでも目玉ともいえる若冲の初期作品。
![伊藤若冲の初期の傑作《紫陽花白鶏図》(18世紀)。大胆な構図。前期の9/9まで展示。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/-/img_3ed4e3a928ce0ab101f11e22381b9d33262662.jpg)
地面にうずくまる白い雄鶏の精緻な表現が素晴らしく、頭上には雄鶏を優しく覆うように、紫陽花が満開の白い花を咲かせる。
太湖石の穴から紫陽花が姿をのぞかせ、存在を主張しているのも、若冲らしいおちゃめな表現。
![白鶏の精緻で写実的な描写と、すべてが正面を向く紫陽花の幻想的な表現の対比が見どころ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/-/img_6e6c11611ff0741dadc52138bebb0204183257.jpg)
本展覧会の特徴は、作品解説のそばに用意されているQRコード。これをスマートフォンで読み取ると、なんと描かれている鳥の鳴き声が流れる。
“鶴”で試してみると、「クワッー、クワッー」という声が響く。
「鶴ってこんな声で鳴くの?」という意外な発見と、自分が久しく鳥の声を聞いていないことにハタと気付く。童心に帰って楽しめる、なんとも楽しい仕掛け。
ちなみに、作品に描かれる鳥の識別には、山科鳥類研究所の協力を得たという。
![QRコードを読み込むと鳴き声を聞くことができる。作品の鳥を眺めながら、鳴く姿を想像してみる?](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/-/img_7d0fa7b3683d8439f25e30ddcf48af7390292.jpg)
2019.08.15(木)
文・撮影=景山由美子