スーパー・ウルトラ・サファリ

 朝いちばんで「木の上に逃げたヒョウの獲物を雄ライオンが横取り」との連絡が入る。急行するもヒョウの影はなく、略奪した朝食にむしゃぶりつく雄ライオンを木陰に発見した。

 臭いはそれほど強烈ではないけれど、バリッと骨を砕く音が耳から離れない。弱肉強食、サバンナの食物連鎖の頂点に立つライオンの圧倒的優位を思い知らされる。

 そして遠くで、もう1頭の雄ライオンの咆哮が……。

 午後は、アフタヌーンティーのスコーンを頬張りながら、ガイドのクリスによるレクチャーを受ける。面白い話を織り交ぜ、専門知識を授けてくれるみごとな講習。

 ガイドはみな博学で動物や鳥、虫だけでなく、植物の知識も豊富だ。彼らはマネージメントやメンテナンスなど、ほかの部署のトレーニングも受けるのだとか。

 だからとにかく、気が回る。動物の動きを察知する能力とゲストの意向を感知するアンテナの両方を兼ね備えているようだ。

 午後のサファリはライオンの咆哮の方角へ。

 と、2頭の雄のレッド・リーチェ(アンテロープの仲間)が雌獲得の覇権をかけて、文字通り角を突き合わせている。カン、カンと剣にも似た音がサバンナに響き渡る……。
 
 すると正反対の方角の茂みから、雄ライオンがササッと現れ、一瞬。1頭のリーチェの首に食らいついて、あっというまに押し倒してしまった。

 木陰まで獲物を引きずり、ゆっくり食事を堪能する。血生臭いとか可哀想とか、そういうことではもはやない。これぞアフリカ、動かしようのない自然界の掟だ。

 衝撃のライオンアタックの刺激が強すぎてクラクラしていたが、スタッフがサバンナに設営してくれたバーを見て和む。一杯が沁みる夕暮れどきだった。

 4日目の朝焼けは言葉を失うほど素晴らしかった。空全体が薄紫から茜に染まった雄大な朝焼けが、きのうの強烈な経験をやわらげてくれる。

 そう。陽はまた昇る。

 そして今日は、ワイルド・ドッグ(リカオンと呼ばれる絶滅危惧種)の群れを追いかける。野生では、世界で7,000頭弱しか残っていないといわれる希少種だ。

 群れは一定の距離を保ちながら展開し、つねに移動。サッカーのフィールドプレイヤーにも似た動きを見せる彼らは、ハンティングの名手でその成功率はサバンナで一番だそうだ。

Vumbura Plains
(ブンブラ・プレインズ)

所在地 Okavango Delta
https://wilderness-safaris.com/our-camps/camps/vumbura-plains

2019.03.17(日)
文・撮影=大沢さつき