ライオン、ライオン、ライオン
朝5時。まだ暗い中、身支度を整え、軽食をつまみにメインロッジへ。
と、なんだか空気がざわついている。
誰も声を出さないし、動いていないのだが……騒然とした雰囲気。
「ライオンが水飲み場にくる」
その場にいた10人ほどが、固唾をのんで水飲み場に目を凝らしていると、草むらからゆっくりと2頭の雌ライオンが姿を現した。警戒しながらも、ノドをうるおしはじめる。10分くらいして、彼女たちは悠然と立ち去って行った。
“なんなのこのキャンプ、スゴ過ぎ”
当然、朝のサファリはライオン探索。情報によると、水飲み場にきた雌ライオンだけでなく、ほかにもライオンが目撃されてるという。
草むらを前にジープを停めると、今度は2頭の雄ライオンが登場した。
まだ若いのでタテガミはないが、前脚の付け根、肩周りの筋肉がハンパない。こんな前脚で撫でられたら一巻の終わりだ。
場所を変えてライオンに遭遇すること、さらに2回。5年前のボツワナ訪問では、1週間の滞在で1度しかお目にかかれなかったのだが。
午後は、カラハリ砂漠の先住民である狩猟民族の案内で「ウォーキング・サファリ」に挑戦。
午前中、ライオンたちがウロウロしていた辺りを、今度は私たちがウロウロするというのだが……。
キャンプから彼らの住まいまでの道中、食用となる草を教えてくれたり、小動物用のワナを仕掛けて見せてくれたり。
面白かったのは、ひとりが説明をはじめると、みんなが一斉に同じように話し出すこと。意味はまったく分からないのだけれど、説明を強調するための行為なのだそうで、“そうだ”“そうだ”と言っているようなものらしい。
「ウォーキング・サファリ」を終えて彼らと別れると、お迎えのジープが「ライオンがまた出た!」と。ライオンのことばかり書いているので、かんたんに見られるものと思われそうだが……これは本当に稀なこと。“ついてる”としか言いようのない状況だ。
もちろん、ライオンのような大物ばかりがサファリではない。珍しいハニー・バジャー(蜜アナグマ)を見ることもできた。やはりシャイな2頭の彼らは、道を横切ってあっという間に姿を消してしまった。
そしてトワイライトタイム。ガイドのポールがジープの前にバーをオープンして、黄昏どきの美しい光を楽しむための一杯を用意してくれる。
「明日は最後だけど何が見たい?」「えー、レパード(豹)が見たい!」との無茶振りに、「うーん、ハードル高いなぁ。明日はジャッカル・デーだよ」。
そんな会話を楽しみながら、2日目が終了。
夜はまたスターベッドで。
眠れないことがこんなに幸せだなんてと思いつつウトウトする明け方、猫に似た鳴き声が遠くで聞こえる。
この鳴き声の主がジャッカルだった。そして前日のポールの予言どおり、3日目のサファリでは頻繁にジャッカルに遭遇することに。一匹ジャッカル、カップル・ジャッカル、親子ジャッカルと、まさにジャッカル・デーだった。
さらには、初日に見たダチョウの死骸というか骨を発見。まだ生々しい状態で、きれいに食べ尽くされていた。
少し行くとくだんのチーター、シャイボーイズが休んでる。お兄ちゃんの後脚も状態がよくなっていてヨカッタなのだが……。なにやら満足気な様子は、おなかがいっぱいということらしい。
そう。彼らはダチョウを平らげた後だったのだ。
合掌。
Kalahari Plains
(カラハリ・プレインズ)
所在地 Kalahari Game Reserve, Central Kalahari Game Reserve
https://wilderness-safaris.com/our-camps/camps/kalahari-plains-camp
2019.03.17(日)
文・撮影=大沢さつき