北島三郎の愛弟子は
稀代の洒落者
えー、大川栄策の話題だけでうっかり1ページを費やしてしまった。その気になればあと10ページぐらいは語れるがこのぐらいにしておく。
とにかく、俺が言い残したいことは、もし今、あなたが仕事中だったり電車に乗っていたりするならば、「大川栄策」とGoogleの検索窓に打ち込むと自動的に提案される「大川栄策 どっきり」というワードの組み合わせが導く動画を絶対に観てはいけないということだ。繰り返すが、絶対にだ。
老婆心ながらさらにもう一回繰り返す。絶対に閲覧してはいけない。その理由は、観たら分かる。
そもそも何の話してたんだっけ。……くもりガラスを手でふいて、あなた話が見えますか。あー、そうそう、セーターの話だった。
とにかく、演歌歌手はジャケット写真においてあまりニットの類を着用していない。が、その代わり、何だか変わったスタイリングが多いことに気づいた。
その最前線を走る若手が、大江裕だ。
この名前を耳にしてもピンとこない読者も多かろうが、去年の紅白歌合戦において「北島兄弟」なるコンビ名で北島三郎の露払い的な役割を果たした2人組のうちの身体が大きい方である。
上の写真で身に着けている衣装もたいがいであるが、彼のポテンシャルはこんなレベルにはとどまらない。
ということで、大江裕のCDジャケットを立て続けに紹介してゆくよ!
2009年にリリースされた記念すべきデビュー曲。まあ、このぐらいの派手な上着を着てる人はさして珍しくないが……。
これを着こなせるファッショニスタはさすがに珍しいだろう。
生地の時点なら、マリメッコとかイーリーキシモトとか言われてもうっかり信じてしまう可能性もあるが、こういう風に仕立てられた今、俺はだまされないぞ!(本当にマリメッコなりイーリーキシモトなりだったら謝ります。さらに、草間彌生作品だったりしたら土下座します!)。
うーん、これ、「SOU・SOU」がデザインしたメンズのジャケットだとか言われたら、ギリギリ信じるかもね。
えー、俺は警察による強権的な職務質問には断固反対する立場を取る市民であるけれども、さすがにこういう唐草模様の上着をまとって堂々と天下の往来を歩いていたら、窃盗犯との疑いを受けてもしょうがないんじゃないだろうか。
だが、もしも職質を受けたとしても、その場で獅子頭をかぶり、獅子舞をやってる者ですと言い訳すれば無罪放免されるだろう。
ということで、来年からは、池波志乃さんの衣鉢を継いで、「つきじ入船」のテレビCMに出演していただきたい。お正月はにぎにぎしく参りましょう! 春は伊達巻から。錦玉子もよろしく。
大将・イズ・バック! 2トーンの着こなしからは、スペシャルズやマッドネスなどといった英国のスカを鳴らすバンドに対する隠しきれない憧れが漏れ伝わってくる。One Step Beyond!
個人的には、このカラーリングにアメリカの伝説的なヒップホップグループ、ア・トライブ・コールド・クエストへのリスペクトを感じてやまない。
なお、ア・トライブ・コールド・クエストと大江裕との間に音楽的共通性は見いだせないが、もっと深い、精神性のようなところでつながっているのだと信じている。
緑を基調としたデザインは、映画『マトリックス』のビジュアルコンセプトを思わせる。大江裕は、サイバーパンクの世界を生きているのだ。
ここまで来ると、もはや誰も追随できない。……いや、唯一、あの人ならば伍することができるかもしれない。
そう、井脇ノブ子元代議士である。やる気、元気、井脇!
ということで、次回は大御所演歌歌手のCDジャケットの世界に迷い込みます。
お楽しみに! GSスタジオで、待ってます。
ヤング(やんぐ)
CREA WEB編集長。社内で竹馬に乗っていたら怒られたよ。
Column
CREA WEB編集室だより
このコラムでは、CREA WEB編集室の日常を彩るよしなしごとを報告しつつ、CREAおよびCREA Travellerのプロモーションに励んでいきます。紀尾井町から、さわやかな風をあなたに。
2019.02.10(日)
文・撮影=ヤング
撮影=深野未季、平松市聖
写真=文藝春秋、共同通信