◆サバティーニ・ディ・
フィレンツェ東京店
[有楽町]
老舗イタリアンの
第二章が始まった
まだイタリア料理店が東京でもまばらだった1981年、フィレンツェに本店を持つ「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」(以下、「サバティーニ」)が銀座ソニービル(現 銀座ソニーパーク)にオープンした。
1914年創業の歴史ある老舗が、世界初の支店に選んだのは銀座だったことで世界中の食業界がざわめきたったのはいうまでもない。
しかも当時、東京はフランス料理全盛期で、イタリア料理はと言うとピザとスパゲティが主流という時代。フィレンツェ本店のレシピを前菜からデザートまで提供するなんて誰もがびっくり!
80年代後半から90年代初頭のバブル時代とともに“イタ飯ブーム”が到来するが、その先駆けとなり本場の味を日本にもたらした功績は非常に大きいものだった。
その「サバティーニ」がソニービルの建て替えにより一旦休業したのが1年半前。
閉店ではないとわかっていても36年もの間、東京のイタリアンを牽引してきた店がなくなることに落胆する声がどれほど多かったことか。
そして待ちに待ったその日がやってきた。2018年10月、ついに「サバティーニ」が移転リニューアルオープンしたのである。
新店舗は銀座駅から地下で直結した「ヒューリックスクエア東京」の3階。
エレベーターが開くとギャルソンが笑顔で迎えてくれ、ウェイティングスペースに通してくれるが、これがちょっとした“お姫さま気分”。出だしからウキウキしてくる。
席数は個室を含め76席。奥行きのある広々としたメインダイニング、優雅な2つの個室はどれもさすがの風格。
東京店のオープン時、フィレンツェ本店から来日したバルディ・ヴィルジリオ総料理長とメートル・ドテルのトンバ・プリモ氏も引き続き担当し、「サバティーニ」の真髄を提供してくれる。
リニューアルを機にメニューも見直した。
フィレンツェ本店と同じレシピ「伝統のサバティーニ風スパゲッティ ワゴンサービスにて」のようにオープン当初から変わらない料理があれば、「トスカーナ風パンスープ リボッリータ」のように黒キャベツやパンを入れたりして変化させたのもある。
こうして“現代でも色褪せない伝統料理”を提供する「サバティーニ」の第二章がスタートした。
本日は100年受け継がれてきたレシピと、伝統を守りつつも新しく手を加えたレシピの料理をアラカルトでいただくことに。
まずは伝統のレシピから。
魚料理は長崎県五島列島直送のキントキダイを使ったトスカーナ地方の都市リヴォルノの伝統料理「カッチュッコ」をセレクト。簡単に言うと魚介をたっぷり使ったスープの一種だ。
サフランを使わずに魚介から出る旨みとトマトだけで味をつけた極上のスープは時に優しく、時に力強い。
少食の人ならパンと「カッチュッコ」だけでお腹いっぱいになってしまうほど。キントキダイ、アサリ、手長海老、ムール貝、イイダコ、そしてトマトの旨みがぎゅーっと詰まったスープ、美味しいに決まっている。
2019.01.08(火)
文=高橋綾子