途中で立ち寄ったリゾート都市
ダーバンでのサプライズ

 この旅では、あたりにはなにもない田舎道にも立ち寄った。クワズールー・ナタール州の「ネルソン・マンデラ・キャプチャー・サイト」はその名のとおり、1962年、運転手に変装して車を運転していたマンデラが警察に捕まった場所。

 現在はマンデラが逮捕された場所として、観光名所になっている。芸術家、マルコ・チャンファネリによる鉄の棒50本でマンデラの顔を描写した記念碑は、田舎道の名物だ。

 キャプチャー・サイトへの起点となるのは、大都会のダーバン。海岸沿いに大型のホテルやカジノが並ぶ、洗練されたリゾート都市だ。さらさらの砂浜にインド洋の温かい海水が打ち寄せるビーチはとてもフォトジェニック。

 ダーバンで私が楽しみにしていたのはズールー族のファミリー訪問だ。けっしてものすごくマニアックな旅ではなく、現地の旅行会社を通じてアレンジできる。これも観光立国、南アフリカならでは。

 郊外のお宅を訪ねると、温かな料理を用意して待っていてくれた。豆、芋、ほうれん草、チキンと、食材は日本でもお馴染みのものが多く、味もとてもマイルド。遠い南アフリカのズールー族の家で食べる料理は、案外、和食にも似ていた。

 優しい料理の後に用意されていたのは、ズールー族の伝統的なダンス。キッチンで黙々と料理をしていたお母さんも衣装に着替えて、エモーショナルな動きを披露してくれた。

 楽器は空き缶やダンボールを工夫して作った使ったお手製なのだが、これがみごとな音色。

 ちなみに、近くに住む娘さんは、「サンゴマ」でもある。

 これは、ご先祖様とコンタクトをとれる、いわばイタコのような、ユタのような人。離れには専用の建物があって、ここでときどき、依頼者のご先祖様と対話をし、いろいろな問題を解決しているのだとか。

 多才でもてなし好き、そしてチャーミングなファミリーに出会えたことは、この旅のいい思い出だ。

 南アフリカには、ヨーロッパ系、アジア系、白人と非白人のミックス、ズールー族にコサ族など、多くの民族が存在する。そんな自国をマンデラは「レインボーネーション」と呼んだ。

 「異なる色が重なり輝く虹のごとく、多数の人種が融和する国」というその意味を、この旅で心から実感した気がする。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)

アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

Column

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2018.10.30(火)
文・撮影=芹澤和美