チロルから世界に広まった
「きよしこの夜」
最後に。「きよしこの夜」が現在のように世界中で歌われるようになった理由を。もちろん、楽曲のシンプルでこころ響く素晴らしさや素朴で胸打つ歌詞あってのことだが……。
初めて歌われた聖ニコラス協会のオルガンが壊れていなければ……もしかすると、「きよしこの夜」はここまで有名な歌にはならなかったかもしれない。
なぜならオルガンを修理に来たチロルの職人が、この「きよしこの夜」を聴き、故郷に楽譜とともに持ち帰り広めたのが発端だからだ。
チロルでも流布された「きよしこの夜」は、行商中に音楽会を行う旅商人たちによってドイツにもたらされる。ドイツで楽譜が印刷され、さらにヨーロッパ中、そしてアメリカへと伝播していったというのが「きよしこの夜」物語だ。
だから「きよしこの夜」200年をザルツブルク州とチロル州、そして作曲したグルーバーの故郷があるオーバーエステライヒ州で、盛大に祝おうというわけなのだ。
ヨーロッパ、オーストリアには数え切れないほどの小さな村があり、音楽を、生活を愛して暮らしている人たちがたくさんいる。
今回は、そんなほっこりとしたオーストリアを巡る旅を「きよしこの夜」という平和の曲をきっかけにしてみてはいかがという提案だ。
Column
トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート
大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!
2018.09.04(火)
文・撮影=大沢さつき