歌詞を生んだ
神父ゆかりの街ヴァークライン

 ナポレオン戦争で荒廃し、長年のバイエルン支配に疲弊していたザルツブルクは、1816年、オーストリア帝国に属することに。そんな年に書かれたのが、「きよしこの夜」の詩だ。

 「きよしこの夜。星は光り、救いのみ子は馬ぶねの中に眠りたもう、いとやすく……」。全6詩句からなる「きよしこの夜」は、平和のメッセージとしてユネスコの無形文化遺産に登録されている。

 実際、第一次世界大戦の西部戦線でも、1914年のクリスマス・イヴに、前線の両サイドからいろいろな言語の「きよしこの夜」の合唱が聞こえたという。

管楽器4人のバンドが、雪の夜でも温かい演奏を聴かせてくれた。(C)WAGRAINER/WEISENBLÄSER

 オーストリアは“音楽”で知られる国だが……。こんな雪の夜でも、ホットワインを飲みながら戸外で音楽を楽しむ。そしてその演奏は、寒さの中でも聴き惚れるほど、アマチュアの域を超えて、たしかにウマイ。

 もちろん教会でのコンサートも楽しみのひとつ。

 この夜はオーストリアに伝わる古楽器の演奏あり、ゴスペルソングありとバラエティ豊かな構成だった。ノリノリのコンサートの締めは、さまざまな歌手がカバーするレナード・コーエンのヒット曲「ハレルヤ」。なんと粋な選曲!

2018.09.04(火)
文・撮影=大沢さつき