エロスをきちんと描いた映画こそ面白い
「愛に偏見は一切ない」と断言する杉本彩さんのラインナップは、かなり過激な内容のものばかり。
「本当の官能とは表面だけ見ると避けたくなるような状況や、『赤い航路』のような危ない倒錯の向こうにこそあると思うんです。でも、官能は誰の中にも必ず存在するもので、実は一番身近なテーマですよね。呼び起こされているかいないかの違いだけで」
エキセントリックな作品とはいえ、どの作品の主人公の気持ちもそれぞれ理解できるという。
「官能って人間の本質に一番近いものだから、それがきちんと描かれているものは映画としても面白い。『赫い髪の女』はセックスしているだけの話なんだけれど、それ以外の描写もとても丁寧で、〝ロマンポルノって素晴らしい〞と発見でした。ディテールが描かれていれば、セックスシーンそのものより想像力が刺激される作品もあります。例えば『コレラの時代の愛』の診察の場面。胸をはだけた患者とそれを見る医師の視線。『パフューム ある人殺しの物語』も嗅覚を通して、官能に訴えてくる作品です」
視覚だけでなく、五感、六感までいかに満足させてくれるかが作品選びの重要ポイントであることは間違いない。もちろんもっと確実に欲情させてくれる〝スイッチ〞もある。
「『昼顔』は禁じられた扉を開けてしまった物語。『チャタレイ夫人の恋人』は抑圧された環境。『流されて…』は主従逆転。これらは王道ですが、エロスを撮る監督のセンスと力量が問われます。愛し合う姿、さらけ出す瞬間、秘めたる欲望を描くというのは人間を奥深くまで描くことですから」
小学生の時に見た『エマニエル夫人』を直感的に美しいと感じた杉本さんだが、感覚的に受けつけないような愛の形があったとしてもシャットアウトせずに、頭で理解しようと努力することがおすすめだそう。
「たとえ自分がその世界に踏み込んでいかないとしても、理解することで恋愛における選択の幅も広がり、想像力が豊かになるはず。人間の違う側面を理解し、受け入れが寛容になれば、人生がもっと楽しくなるのです」
Aya Sugimoto
1968年京都府生まれ。女優、作家、ダンサーなど幅広く活躍中。最新刊の恋愛エッセイ集『いい男の愛し方』も好評
2011.08.20(土)
text:Reiko Taguchi