酒飲み天国こと大井町界隈を徘徊

●おしだ店
おしださんという人がフランチャイズとして経営しているのであろう。まったく関係ないが、俺が大学生時代にアルバイトしていた早稲田予備校の上司が、忍田(おしだ)さんという人であった。模擬試験の時に配られる冊子に、このコラムのような受験には何の役にも立たない記事ばかり書いてご迷惑をおかけしたが、お元気だろうか。
●蝶屋店
この店舗、酒飲みの世界では非常に有名な立ち飲みのできる肉屋「肉のまえかわ」の向かいにある。ササミ刺しとかチャーシューとかをつまみに、この支店の名前にちなんでチョーヤの梅酒なんかに酔いしれながら、ニューパリジャンやニューパリジェンヌの姿をボーッと眺めてみたい。
●ゼームス店
「さいとう店」や「おしだ店」のように、ゼームスという外国人が経営しているわけではない。ゼームス坂という通りに面しているのだ。明治時代、この地に住んでいたJ・M・ジェームズという英国人商人が私財を投じて急坂を緩やかな坂に改修したことから、この地名が付けられたという。つまり、目黒の権之助坂と同様のネーミングである。隣に「まいばすけっと」があるのは「アイリス店」と同様なのだが、出店戦略に共通性でもあるのだろうか。
●三ツ又店
「レディースファッション富士」という文字が掲げられているが、かつては洋品店だったのかもしれない。この界隈は、純喫茶やケーキ屋など、ノスタルジックな店が多くて心惹かれる。なお、この近くにはかつてCREAの編集部員だった女性が営む「Gatito」という素敵なテキーラバルもあるので、よければ行ってみてください。

 長男を映画館からサルベージした後は、小学生男児をお持ちの家庭であれば先刻ご承知であろう「仮面ライダーバトル ガンバライジング」をやらせることを餌に大井町のLABI ヤマダ電機のゲームコーナーへ。

 100円玉5枚を手渡し、お父さんはちょっと仕事でその辺を歩き回らなきゃいけないからと冷静に考えたら何だか意味不明なことを言い残して札所参りへ。大井町周辺には、実に4店ものニューパリーが集中しているのだ。

 ちなみにLABI品川大井町店デジタル館のこの階は、おもちゃ屋とゲームセンターと遊具コーナーが合体した、子どもにとっては天国のような場所である。ほとんどの百貨店からおもちゃ屋が消えた今、こういう役割は家電量販店が担っているのだなと改めて思わされる(そもそもこのビル、10年ちょっと前までは丸井が入っていたっけ)。

 大井町周辺はいい飲み屋が多い。特に、狭い路地に昔ながらの飲食店が密集するという意味で新宿のしょんべん横丁(思い出横丁とは呼ばない)と双璧をなす東小路飲食街は趣深い。昔、大雨の日に東小路飲食街を訪れたことがあるが、『ブレードランナー』の世界がリアルに現れたようで感激した。

 今度は夜にゆっくり飲みに来たいと思いながら、4店を制覇。

2018.05.01(火)
文・撮影=ヤング