額に稲妻の傷跡をもつ魔法使いの少年の物語『ハリー・ポッターと賢者の石』が英国で出版されたのは、1997年のこと。当時は無名の作家だったJ・K・ローリングによる初版わずか500部から始まったハリー・ポッター・シリーズ全7巻は、この20年間で世界80言語に翻訳され、総計販売部数4億5000万部以上という歴史的な数字を記録、映画も大ヒットを博しました。

 子どもだけでなく、大人をも魅了したこの作品のマジカルな世界に浸れる、英国内のスポットを巡る旅へとご案内しましょう。

マグルのためのホグワーツ特急

往年の蒸気機関車が、グレンフィナン陸橋を行く姿は、まさにホグワーツ特急そのものです。(C)VisitScotland

 ハリー・ポッターの物語のなかでは、ハリーやロン、ハーマイオニーたちが毎年夏休みの後にホグワーツ特急に乗り込み、山や谷、湖など美しい景観のなかを学校へと向かいます。

 「ワーナー・ブラザーズ・スタジオ・ツアー:メイキング・オブ・ハリー・ポッター」には、撮影で使われた本物のホグワーツ特急があり、なかを見学することができますが、このホグワーツ特急が実際に走ったのが、スコットランドの鉄道の一部。ホグワーツ特急を疑似体験できるルートなのです。

左:蒸気機関車から吐き出される蒸気は、ものすごい量。この白くかすんだ風景が旅情を誘います。
右:フォート・ウィリアムの駅で働く青年たちは、どこか懐かしいつなぎ姿です。
フォート・ウィリアム駅からジャコバイト・トレインの旅が始まります。
白煙を上げながら走るジャコバイト・トレイン。

 ハイランド地方最大の都市、フォート・ウィリアムから、グレンフィナンまでの区間の一部は、まさに映画シリーズで使われたロケーション。さらに、春から秋までの期間に限り、この路線でホグワーツ特急と同様の1940年代から1960年代に使われていた懐かしの蒸気機関車に乗ることも可能です。

 ディーゼル・エンジンの登場で、1962年に一度はこの路線から姿を消した蒸気機関車ですが、1984年から再び観光客向けにカムバック。1995年からジャコバイト・トレインと名称を改め、現在では「世界でもっとも素晴らしい鉄道の旅のひとつ」として鉄道ファンの間では知られています。

左:ジャコバイト・トレインのファーストクラスのコンパートメント。
右:車内の売店では、ハリポタ・グッズが販売されています。

 もちろん、ハリポタ・ファンにも人気が高く、車内の売店では衣類や小物など、数々のハリポタ・グッズが販売されています。ファーストクラスのコンパートメントをのぞけば、不思議なお菓子をほおばりながらホグワーツへと向かうハリーやロンの姿が目に浮かぶようです。

2018.01.20(土)
文・撮影=安田和代(KRess Europe)