一生ものになりうるコスメはいかにして生まれたか? 美容ジャーナリスト歴四半世紀の渡辺佳子が直撃取材!
“コスメ職人 情熱大陸”と題して、4回にわたって職人・開発者たちの情熱をお届けします。
今回は第2回 スックです。
険しい道を選ぶことでひらけるファンデ新時代
2年前の秋に画期的な下地不要のファンデーション各種を発売したスック。その時、同時発売を断念していたパウダーファンデーションがついに完成したと聞いて、開発担当、佐藤実紗さんの元へ。
下地は今やメイクの常識ともいえるのになぜあえて下地抜きで?
「スックも当初はUV、下地、ファンデと層を重ねて美肌をという考えでしたが、膜の一枚一枚は薄くても重なれば厚みが出ますよね。肌とファンデの一体化を極めるなら一品に各種要素を持たせて一枚の薄膜にしたほうがよいと考えたのがきっかけです。だから、下地不要というより『下地の機能を内包する』ファンデーションですね」
でもパウダリーは、化粧のりを考えるとハードルが高かったはず。
「はい。密着と薄膜の持続というのは難しい両立課題でした。発想の転換が必要で、水を利用した新ネットワーク構造を考案しました」と、研究開発所管の佐野章子さん。
「ファンデーションを肌にのばすと、まず特殊なオイルが肌表面にぴったりフィットして肌とファンデーション成分とのつなぎとなります。肌のアミノ酸に似た構造を持たせてあるのでなじみやすいのです。これが下地代わり。一方、このオイルは、オイルでありながら水となじむ性質も持ちます。ファンデーション成分にも水となじみやすい部分を持たせたので、オイルとファンデーション成分が、徐々に水を通してつながれ、網目のような構造の薄膜を作るのです」
なるほど、塗った直後より少々時間がたってふと見ると、粉でなくクリーム状の薄膜になっている。
「でもそのために、粉の一つ一つを水となじみのよい素材で包むという作業をしているんですよ」
同じように見えない作業として、伸縮性のある弾力性・ポリマー素材も、網目の間に入れ込んだ。これにより、表情が変わって肌が動いても、薄膜がストッキングのように肌に沿って柔軟に動き、目尻やほうれい線など、気になる部分のヨレができにくくなっている。
2012.03.15(木)
text:Keiko Watanabe
photographs:Nanae Suzuki / Hirofumi Kamaya