伝統の蒸し菓子にも
トウモロコシ味!

 まだまだありますよ~。マレーシア伝統のお菓子「クエ」に、目の覚めるような黄色い姿を見つけたら、それはトウモロコシ味。

左中央の黄色が「クエ・ジャゴン」。ジャゴンとはトウモロコシのこと。ちなみに手前のピンク色は小豆味の「クエ・カチャン」、奥のパープル色は紫芋味の「クエ・ウビ」。

 米粉の生地にココナッツミルクを加えて蒸したクエは、名古屋の名菓ういろうとよく似た、もっちりとした食感。「クエ・ジャゴン」は甘さひかえめで、トウモロコシの香りが濃厚。そしてなにより、鮮やかな黄色が美しいんです。

マレーシア版クレープにも
トウモロシは必須!

 週に1回、朝または夜、路上に露店がずらっと並ぶパサー(市場)。マレーシアのストリートフードが大集合する、食いしん坊必見のスポットなのですが、ここでの人気No.1のおやつが「アパンバリ」。これにもトウモロコシが入っています!

小麦粉の生地を専用の鉄板で焼くアパンバリ。大判焼きとクレープの間のようなふかふかの生地で、具はピーナッツとトウモロコシ。
焼きあがったら、半月状に折りたたんで販売する。

 焼きたてアツアツをほおばれば、ピーナッツの香ばしさ、トウモロコシのジューシーな甘み、そしてトウモロコシのほのかな塩気。この3つの味のハーモニーが絶妙で、トウモロコシの魅力を最大限に引き出すとこうなるんだ! と感動したおやつ。本当においしいです。

 ほかにも、トウモロコシをねって餡にした「コーンまん」など、トウモロコシは様々なスイーツにアレンジされ、マレーシアの食卓を華やかに彩っています。

 もうひとつおまけ。トウモロコシの油で作ったクッキー。

皮ごと砕いたピーナッツに、コーン油を混ぜて作る「ビスク・マゾーラ」。さくさく、ほろほろの食感に仕上がる。

 いかがでしたか。いろいろ紹介しましたが、実はわたしも、初めてトウモロコシ・スイーツを食べたときはエッ!? となりました。ところが4年のマレーシア滞在ですっかり慣れ、気がつけば、トウモロコシ=スイーツという感覚がフツーになっていました。

 トウモロコシは甘くてジューシーなので、マレーシア人にとってはフルーツ。もしくは、穀物のひとつと考えれば、小豆と同じ立ち位置と考えてもよさそうです。赤飯ではご飯のおともだし、砂糖を加えればスイーツですよね。

 マレーシアで新しい味覚を発見し、じぶんにとっての“おいしい”の世界が広がるのは楽しいもの。ぜひいつか、マレーシアの魅惑のトウモロコシ・スイーツの世界をのぞいてみてください。

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2017.09.11(月)
文・撮影=古川 音(マレーシアごはんの会)