【次に流行るもう一曲】
NEWS「EMMA」

情緒あるメロディをクールに落とし込む

伊藤 知っている人もいると思いますが、NEWSというグループをメジャーデビューから4年くらいプロデュースさせてもらっていました。プロデューサー兼ディレクター兼A&Rという感じでガッツリと向き合っていただけに思い入れのあるグループです。人数は随分と減りましたが、今も彼らがバリバリに頑張っていてくれることでメチャクチャ元気をもらっています。

山口 グループ立ち上げ時のプロデューサーですから、特別な存在ですよね。その流れで、「青春アミーゴ」という大ヒット曲も出ていますしね。この間、たまたまデータ資料をチェックしていて知ったんだけど、2005年のオリコン年間No.1ヒット曲なんだね? お見それしました(笑)。年間1位はすごいことだよ!

伊藤 ありがとうございます。自分でないとできないことだったと自信をもって言えますが、もちろん運もあったし、いい経験ですよ。

 最近のNEWSはオレがプロデュースしていた時よりもグッと奥行きを増して、ゆるぎないフィロソフィーを持ってやっているのを感じます。オレの手から離れて最初のシングル「さくらガール」が衝撃的にカッコ良かったし、2012年の「チャンカパーナ」はヒット曲になった。

山口 「チャンカパーナ」もよかったですね。

伊藤 ジャニーズファンはもちろんなんですけど、不思議と音楽業界人に刺さってましたね(笑)。そのNEWSが2017年2月8日に21枚目のシングル「EMMA」をリリースしますが、これもヒットしそうな予感がビンビンする曲です。とにかくキャッチーなメロディなんだけど、そこに何とも言えないNEWSだけが持つ世界観を醸し出しているんですよね。下手するとダサかったりオッサン臭くなりそうな際どいメロディ、でも日本人が好きな情緒のあるメロディ、それをキッチリとクールでトレンド感もある落としどころに持ってきている。考えてみると3曲ともヒロイズムの曲なんですよ。

山口 そうですね。

伊藤 ヒロイズムもLATKO.のメンバーで、今はLAで活動しています。LAで作るものと日本向けに作るものとをキッチリ頭の中で分けているけど、それらがお互いに作用しあって彼の作品を更に高いところに運んでいっているんですよ。

山口 そのあり方が、新しいし、僕が野球界における「野茂英雄」、パイオニアの役割を期待する所以なんですよ。LAで日本向けに曲を作りたい作家ともコーライティングする。アメリカ市場に出ていきたい日本人作曲家のゲートウェイにもなる。まさに日米音楽界の架け橋になれるのがヒロイズムだと本当に期待しています。

伊藤 はい。「EMMA」はそんなヒロイズムの“今”を切り取った作品だし、これからのNEWSの活躍を感じさせる作品になっていると思います。

NEWS「EMMA」
ジャニーズ・エンタテイメント 2017年2月8日発売
初回盤A[CD+DVD]1,400円、初回盤B[CD+ブックレット]1,400円、通常盤[CD]1,100円(税抜)
■2003年に結成されたNEWSは、翌年8人組としてメジャーデビュー。錦戸亮、山下智久が脱退した2011年以降は、小山慶一郎、加藤シゲアキ、増田貴久、手越祐也の4人で活動を続けている。21枚目のシングルとなる本作の表題曲は、加藤シゲアキが出演するフジテレビ系ドラマ「嫌われる勇気」オープニングテーマ。
■「EMMA」作詞/Hacchin’Maya、ヒロイズム 作曲/ヒロイズム 編曲/CHOKKAKU

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室「リリック・ラボ」 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/
L.A↔TOKYO の音楽を繋ぐクリエイターチーム「LATKO」 
http://latkojp.com/

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2017.01.30(月)
文=山口哲一、伊藤涼