冬の京都のおすすめスポットに立ち寄り、近郊の温泉地を訪れる「京都経由、温泉行き」の旅スタイル。最終回は、日本最古の温泉地「有馬温泉」と京都のいいとこどりプランをご紹介。

 温泉は、まるで邸宅のような異国情緒漂う老舗湯宿の別墅(べっしょ)をセレクト。湯はもちろん、漁港直送の海の幸をフレンチで堪能して。京都での過ごし方は、嵐山散策からスタート。嵐山の「コーヒーショップ」、京都市内では「パン」「おやつ」と、3つの立ち寄るべきスポットをご紹介。

 冬の嵐山の美しさと京都でしか味わえないグルメ、そして歴史ある名泉が待っている。今こそ行きたい、“京都経由、有馬温泉”の旅へ!

vol.03 有馬山叢 御所別墅(有馬温泉/兵庫県)

歴史ある邸宅のような宿で最高の有馬フレンチを

別墅の入口。風情ある広い庭が出迎えてくれる。

 日本最古の温泉地であり、日本三名泉にも数えられる有馬温泉。そのなかで最も歴史ある宿「陶泉御所坊」の別墅として、当主15代目が仲間とともに始めたのがこちらの湯宿。前身はなんとお寺。明治の開国期、神戸に居留地ができて外国人観光客が増えたのに合わせて、清水寺が外国人専用ホテル「清水ホテル」をオープン。その跡地に建設された。

 テーブルや椅子などインテリアは洋風だが、素材やタッチ、色合いに和のテイストをとりいれるなど、当時の異国情緒を思わせる独特の風情は、非日常を演出して旅気分を盛り上げてくれる。

天井が高く開放的な空間。

 全室にはサーマルルームと呼ばれる低温サウナを完備。薄暗く瞑想的な室内は体温と近い約36度に設定され、長居できるのが特徴。読書をしたり、ゆっくりハーブティを飲んだり、過ごし方はアイデア次第。体の免疫機能を高めるほか、冷え症改善も期待できるとか。

ヴィラタイプの部屋は10室。

 温泉は、御所坊裏で湧出した「御所泉源」から運湯された掛け流し。古来より人々を癒す湯として尊ばれてきた有馬温泉は、海水の濃度の2倍といわれる塩分、鉄分、その他ミネラルが豊富で、日本でも指折りの“身体が温まる温泉”として名高い。冷え症の改善と予防にもつながる薬効は、大人の女性にとって嬉しいポイント。

御所別墅離れの大浴場。有馬にあった唯一の温泉浴場、一ノ湯二ノ湯とは御所坊だけが渡り廊下で繋がっていたそう。そのときの浴場を偲んで、湯船は当時と同じくこぢんまりとした大きさ。

 夜は、御所別墅ならではのフレンチを。有馬温泉にある宿泊施設の多くは浜坂漁港と提携しているため、海の幸がいち早く新鮮な状態で手に入る。冬の旬はなんといっても伊勢海老と松葉蟹。外国の観光客を土地の食材でもてなした「清水ホテル」の流れをくむ湯宿らしく、神戸居留地のフレンチで修業を積んだシェフが、旬の地産を用いた最高の有馬フレンチをもてなしてくれる。

お食事はレストランで。カウンター席からは庭景が望める。個室もあるので気分に応じて変えてみても。
冬の旬は、伊勢海老と松葉蟹。浜坂漁港から直送されているので鮮度抜群!
コースメニューより。伊勢エビのオランデーズソース焼き(左)、松葉蟹のサラダ(右)。

 希望すれば、5ツ星ホテルにも展開するアロマテラピーサロン「有馬B&I」のトリートメントを受けることもできる。温泉で身体を充分に温めた後の施術はさらに効果的だとか。温泉とセットで冬の疲れをここですべて取り払い、心身の巡りを整えて。

施術は室内で受けることも可能。心も身体もとろけるような至福のひとときを。

有馬山叢 御所別墅(ありまさんそう ごしょべっしょ)
所在地 兵庫県神戸市北区有馬町958
電話番号 078-904-0554
http://goshobessho.com/

有馬温泉の魅力

御所別墅の温泉にひかれている「御所泉源」。

 有馬温泉は日本書紀に記される日本最古の温泉であり、枕草子で評されるように日本最高の名湯。古来より人々を癒す湯として尊ばれ、豊臣秀吉など時の権力者が愛してやまなかったのは有名。歴史と伝統がありながらも親しみやすい温泉地の雰囲気も評判だ。

 温泉には、環境省が療養泉として指定している主成分9つのうち7つもの成分が含まれており、これは国内ではもちろん、世界的にも珍しいことなのだとか。しかも、人間が土を掘る技術をもたない時代から湧き出た温泉ということからも、大地がもたらした“栄養満点の湯”といえるかもしれない。また、子宝の湯とも呼ばれ、多くの女性が訪れる。

六甲山の冬の風物詩「氷瀑」。2月が見頃。訪れる際は防寒を忘れずに。

 有馬温泉から六甲山へは歩いて2時間程でいける。冬に訪れるなら山間に現れる凍った滝「氷瀑」を見にいくのはいかが。体を動かしてからの温泉はまた格別の爽快感。ほか、緩やかな登山コースもよし、歩くのが苦手というかたはロープウェイを利用しても。

●有馬温泉までのアクセス
電車利用の場合、大阪から約1時間、京都から約1時間30分。

2017.01.28(土)
撮影(p2、3、4)=伊藤 信
文=吉村セイラ