有馬温泉の町並み。

 有馬温泉は、神戸市の中心部から車や電車で1時間もかからず到着する、まさに「関西の奥座敷」。

 「日本三古泉」「日本三名泉」のひとつとしても知られています。太閤橋が架かる有馬川沿いには、太閤秀吉にちなんでひょうたんをあしらった親水公園があり、赤い欄干のねね橋やねね像も。日帰り入浴ができる「金の湯」「銀の湯」「太閤の湯殿館」はもちろん、足湯も大人気です。湯本坂を歩けば、名物の炭酸煎餅や佃煮を売る木造のお店が並んでいて、温泉街の情緒もたっぷり。

有馬温泉の風景。太閤橋から見た「親水公園」。

 「山椒彩家」は、そんな坂道に2016年3月1日オープンした山椒の専門店です。

 お店に入ると、山椒のさわやかな香り。一角で乾燥した山椒の実を石臼で挽いているのです。

 「有馬が山椒の名産地だったことから、実山椒を加えて煮たものを有馬煮というようになりました。温泉街に山椒の専門店があったらいいと思って」と、店を開業した川上良さん。永禄2(1559)年創業の佃煮の店「川上商店」の主人でもあります。

左:緑ののれんが目印。
右:お菓子のほかいろいろな山椒食材が並びます。
佃煮の「川上商店」本店。

 明治初期の有馬の絵図を見ると、1階で温泉染めや人形筆、佃煮を売る建物の2階は宿。「うちも元々は宿屋で、山から山椒や蕗、松茸を採って佃煮を作り、売っていたのでしょう」と川上さん。佃煮専門店になったのは、大正から昭和初期頃。

 「今も、手間ひまかけて、花山椒や実山椒を作っています」と言います。本店向かいの「竹中精肉店」の国産黒毛和牛肉を煮た、こだわりの有馬煮もおすすめだそう。川上商店だけでなく、こちらのお店でも購入できます。

醬油ベースの「山椒ドレッシング」900円。

 「山椒彩家」に並ぶのは、香辛料としての粉山椒や山椒をたっぷり入れたドレッシング、ごはんのお供の山椒入りの佃煮だけではありません。山椒を使ったおやつがあるのです。

2016.12.15(木)
文・撮影=そおだよおこ