池波正太郎も愛した、昭和5年創業の老舗甘味処

竹むら(東京・神田)
甘味:揚げまんじゅう、あわぜんざい、栗ぜんざい、黒あんしるこ

軒下に木製の提灯が下がる建物は、入母屋造りの木造3階建て。

 東京都千代田区・神田は、「神田まつや」「かんだやぶそば」「いせ源」「ぼたん」など、戦前から続く老舗の密集地帯。風格ある店構えに惹かれて中を覗きたくなっても、気軽には入りにくいものですが、比較的入りやすいのがここ、甘味処「竹むら」です。

 昭和5年創業の有名店とあり、数々のガイドブックや書籍で紹介されていますが、私が知る中で一番古いのは池波正太郎の『東京のうまいもの』。池波氏は「神田まつや」でお酒を飲んだ後などにここで甘味を楽しんだそうで、「竹むら」には戦前の東京の汁粉屋の面影があると書かれています。

 風情ある木造の店舗は、「東京都選定歴史的建造物」に指定されている貴重な建物。扉を開けると、店内は小ぶりな木のテーブル席と小上がりのお座敷に分かれていて、静かで温かな独特の空気が漂っています。店内は撮影禁止のため写真を載せられませんが、障子から差す光や欄間の細工、木の柱の質感など、日本建築のディテールを愛でるだけでも懐かしい安らぎに包まれます。

「揚げまんじゅう」(2個)470円。テイクアウトも2個から可能。

 席に着くとすぐに出されるのは、お茶ではなく、桜の花の塩漬けを浮かべた「桜湯」。これを飲みながらメニューに目をやると、一番上に書かれているのが名物の「揚げまんじゅう」。テイクアウトもできますが、やはりお店で熱いお茶と共にいただく揚げたては格別です。敷紙に油が染みないうちにお箸で持ち上げ、一口かじれば、カリッとしたきつね色の衣の香ばしさと熱々のこし餡の甘さが混ざって、乙な味わい。生地は厚すぎず薄すぎず、ピロシキのようなふんわり感に癒されます。

 1人前2個は多いかな? と思っても、軽いので大丈夫。緑茶を飲みながらハフハフ頬張って、温まりましょう。

2016.12.14(水)
文・撮影=小松めぐみ