[Next Morning] #155メートルの黄金分割

自己顕示を消しきっていると賞賛された
渡月橋のひたすらな水平美

13世紀、亀山上皇が橋の上を移動する月を眺めて「くまなき月の渡るに似たり」と述べたことから渡月橋という名に。下を流れる川は嵐山付近では大堰(おおい)川、上流では保津川、下流では桂川と名を変えて呼ばれている。「京都・嵐山花灯路」開催中は、渡月橋もライトアップされる。

 司馬遼太郎は『街道をゆく』の「嵯峨散歩」で「渡月橋は、ひたすら水平の一線をなしている。それも、橋であることの自己顕示を消しきったほどにひかえめである」「どこから見ても、景観のなかでは、低目の位置に渡月橋の一線があり、この位置が、黄金分割になっている」と、その“地味の美”を称えた。まだ人の少ない朝方、155メートルの水平美をゆっくり自分のペースで渡る贅沢を。

紅葉の山々と保津川の流れ。川下りする小船に山沿いを走るトロッコ列車─これらを一望できるのが嵐山公園亀山地区の展望台。対岸には星のや京都や、嵐山中腹の大悲閣千光寺も見える。反対の東側に目を向ければ、京都中心部も。
トロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅まで全長7.3km、所要時間約25分で運行する嵯峨野トロッコ列車。嵐山を抜け、保津峡谷を見下ろしながら山肌を走る臨場感はたまらない。窓ガラスがない「ザ・リッチ号」ではさらに冒険気分が味わえる。

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2016.10.07(金)
Text=Hiroko Nakano
Photographs=Mariko Taya、Hideya Katsura、Katsuhiko Mizuno、Hidehiko Mizuno
Map=Kenji Oguro

CREA 2016年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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