育児については「脅かし」のレベルが違う

しまお 子どもを連れてエレベーターのない場所へ行ったり、あちこち寄り道をする自分の生活スタイルを考えたら、ベビーカーはしばらく要らないな、本当に必要になったら買おうと。で、先週、バザーですごくいいのが1,500円であったんで、買ったんですけど。そういうちょっと立ち止まって考える時間は必要かなと思うんです。西松屋とかアカチャンホンポとかに行くと、「あれも、これも」って、本当に痒い所に手が届く商品があるし、周りが持ってると私もって思いがちだけど、情報と向き合うよりも、まず子ども本人や自分たちがいいと思えるっていうことをしなきゃって、ハッと気付いたんです。

ジェーン 多分、そうやって自分で考えて決めるという行動が全方位でできると、心が一番穏やかになるんですよね。でも、やっぱり世の中は人がものを買うように仕向けてくるから。毎年新しい赤い口紅が出るのにしたって何にしたって、結局全部商売の話じゃないですか。で、向こうはプロだから、やっぱり躍らせようとしてくるわけですよね。

しまお また、子どものものなんかは、ちょっと命にかかわるから、一番安いのじゃないほうがいいかなって思っちゃうんですよね。

ジェーン ちょっと脅かしのレベルが今までと違いますね。「モテない」とかじゃないもんね。

しまお そうそうそう。

ジェーン 今までは、私たちへの最大の脅かしといえば「モテない」でしたけど。

しまお ファストファッションとかチープなコンビニコスメとかを買うのは、楽しいじゃないですか。でも、子どものものって、なんか……。

ジェーン チープ粉ミルクじゃ駄目ですもんね。

しまお そう。やっぱり「命!」(ゴルゴ松本の「命」のポーズをキメる)

ジェーン なるほど。そういう世界が待ってるんだ。

しまお 常にそれがつきまとうんですよね。

ジェーン ちょっと一緒にしちゃ申し訳ないですけど、同じ命とかライフスタイルというところで、「うわ、こんなに今変わったんだ」って思うのがペット。私が子どもの頃犬飼ってたとき、「肥満犬用のフード」なんてなかったよ。

しまお 昨日のすき焼きとかあげてましたよね。

ジェーン そうそう。それがいいか悪いかは置いておいて。玉ねぎは猫にあげるな、ぐらいはあったけど。何なの? 今のあれ。

しまお ベビーカーに赤ちゃんがいるのかなと思って見たら、犬がチョンと乗ってたりする。(talk04に続く)

ジェーン・スー
作詞家/ラジオパーソナリティ/コラムニスト。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)など。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金、11:00~13:00)が放送中。

しまおまほ
エッセイスト。1997年に漫画『女子高生ゴリコ』(扶桑社)でデビュー後、漫画やエッセイを執筆する他、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」にレギュラー出演するなど、幅広く活躍を続ける。現在、「文學界」に小説「スーベニア」を連載中。著書に『マイ・リトル・世田谷』(スペースシャワーネットワーク)など。

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。

著 ジェーン・スー
本体1,300円+税 文藝春秋

» 立ち読み・購入はこちらから(文藝春秋BOOKSへリンク)