文人たちに愛された名湯の地

萬国屋の庭園大露天風呂「桃里の湯」。

 また、鶴岡には名湯の誉れ高い温泉地も点在しています。温海川のほとりに共同浴場や旅館などが立ち並ぶあつみ温泉は、1000年の歴史をもつとも伝えられる古湯。松尾芭蕉、与謝野晶子ら文人たちにも愛され、レトロな風情を残す小さな町は、のんびりと休日を過ごすのにうってつけです。

温海川のほとりでひときわ豪奢な萬国屋。

 この温泉町でひときわ豪奢な建物が、創業約300年の老舗旅館「萬国屋」。“プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選”に36年連続して上位入賞を果たしている名宿です。

 ご当地の旬をたっぷり取り入れた料理の美味しさ、ゆったりとくつろげるお部屋の快適さもさることながら、なんといってもお楽しみは、多彩に用意された温泉の数々。四季折々の美しい風情も満喫できる庭園露天風呂の心地よさは格別で、さらりとした湯は肌にやさしく、ゆったりつかって温泉成分をたっぷりといきわたらせれば、全身ツヤツヤに!

早朝には地元の名産を販売する朝市も開かれます。

あつみ温泉 萬国屋
所在地 山形県鶴岡市湯温海丁1
アクセス JRあつみ温泉駅下車(要予約で送迎あり)
電話番号 0235-43-3333
料金 1泊1名19,590円~(1室2名利用、夕・朝食付き)
URL http://www.bankokuya.jp/

美しい民芸品を作り続ける村

左:シナノキの糸で作ったかわいい編みバッグ。25,920円~
右:小さなコースターを実際に自分で作る、しな織体験も人気。1,000円

 あつみ温泉から車で30分ほどの山奥には、日本三大古代織りのひとつに数えられる“しな織”の伝統を受け継ぐ集落もあります。しな織とは、シナノキ(銀座・並木通りのあの木です)の樹皮から作る糸を使い、丁寧に昔ながらに織り上げていく織布のこと。春の訪れとともに山里の木々から皮を集め、乾燥、煮だし、糸づくり……、そして雪深い冬にその糸を使って機織りをし、ひとつの作品が出来上がるまでは、まさに1年の歳月を要します。

 隔絶した秘境の村だからこそ、奇跡的に受け継がれてきた手仕事によって生み出される布地やさまざまな民具の美しいこと。民芸好き、雑貨好きにとってはたまらない場所です。

関川しな織センター
所在地 山形県鶴岡市関川字向222
アクセス JRあつみ温泉駅から車で約30分
電話番号 0235-47-2502
開館時間 8:30~12:00、13:00~17:00
休館日 1~2月の日曜、年末年始
URL http://shinafu.jp/

2016.08.07(日)
文=矢野詔次郎