バリ島の農家に嫁入り?

左:朝、村人達は家にある寺院や門などに花やお線香を供える。この女性の頭の上のお盆にも、たくさんのお供え用の花とお線香が載っていた。
右:すれ違う村人たちの表情は穏やかで、にこやか。心豊かに暮らしていることがよく分かる。

 アクティビティの名前は、「農場1日体験」。所要時間は8時間。ひとつのアクティビティの取材としてはかなりの長さなので、日本を旅立つ前に内容を聞いてみた。4時間の半日コースもあるということだったので。半日で充分なのではないかと思ったのだ。

 ところが、「ぜひ8時間体験して醍醐味を味わってほしい」と勧められて、ならば、とまる1日かけることにしたのだ。

左:家の敷地内に入れてもらったら、ちょうど少女が寺院にお供え物をしているところだった。
右:村で出会った子供たち。彼らの表情も明るい。

 まずは、ビレッジウォークから。その名の通り、リゾートの敷地を出て近隣の村を散策するというもの。リゾート裏手の急な斜面を上ると、もうそこには村人が住む家があった。石造りの塀に囲まれた家々は、思ったよりも大きくて、数家族が一緒に暮らしていた。塀の中には小さな寺院もあって、毎朝お花と聖水、そしてお線香を供えている。

 そのうちの1軒の敷地に入れてもらった。寺院の他にも、結婚式などで使うという小さなガゼボがあったりして興味深かった。

左:朝食はアユン川のほとりの、蓮池に囲まれたガゼボで。
右:朝食は、鶏肉のお粥とフルーツ、そして甘いココナツミルク粥。ほかに、デザートはバナナフリッターを選ぶことができる。

 リゾートに戻ると、敷地内のライステラスの下、アユン川のほとりにある蓮池に囲まれたガゼボに案内された。そこには、少し遅めの朝食が用意されていた。実はレストランで朝食は食べたのだけど、あまりに美味しそうだったので、2回目ということは内緒にして(笑)、再びいただくことに。村でかなり歩いたので、残さずにぺろりと食べてしまった!

 ひと休みしていると、「そろそろライステラスに行きましょう」と。そう、このアクティビティのメインイベントは農場の体験なのだ。着替えを用意するように言われていたので、ここで、汚れてもいい服に着替えるものと思っていたら、そのままリゾートの敷地内にあるライステラスへと案内された。

 「え、着替えは? このまま泥の中にはいるの?」などと戸惑っている間に、農民の方の指導が始まった。「まずは田んぼの土を耕して!」と、大きな鍬を渡された。

農作業は、農民の方の指導のもと、土を耕して、平らに均して、苗を植えていく。

 否応なしに靴を脱いで田んぼの中へ。鍬でひととおり土をかき混ぜたら、こんどは大きなヘラのようなもので平らに均す。これがけっこう難しかった。力が必要なのだ。でも、変に力を入れすぎてコケたら服が泥だらけになる。必死で農具と格闘した。

 すると、今度は苗を渡された。「縦横、同じ間隔でね」と。見本を見せてくれる農民の方の作業の速いことといったら、まるで機械で植えているかのよう! 早く終わらせたい一心で私も急いで苗を土の中へ。

 でも、私が植えた苗はなんだか不揃いで元気がなく見える。意外に難しいし、腰を痛めるというのがよく分かった。たとえどんなイケメンに求婚されても、農家への嫁入りは無理だと思った(笑)。

左:農作業の後は、新鮮なココナツジュースで喉の渇きを潤す。器用にカットして、巧みに飲み口を作ってくれた。
右:リゾートのメイン棟に近いライステラス。私が植えた苗が、こんなふうに立派に育つことを願うばかりなり。

 泥だらけの手足を洗って靴を履き、ようやく農作業が終了。次はアクティビティ最大のお楽しみ、スパの時間だった。労働後にスパとは、よく考えられたプログラムだと感心してしまった。ニンジンをぶら下げられたら、田植えも頑張れるもの(笑)。

2016.05.31(火)
文・撮影=たかせ藍沙