フレッシュな新茶と優しい味のとろろ汁でほっこり
港で桜えびが揚がる頃、台地でいい香りを漂わせているのが、新茶。お茶の一大産地である静岡では、毎年4月の半ばから、各地で新茶の茶摘みがスタートする。
すがすがしい若葉の香りといい、ほのかな甘みといい、フレッシュな味わいは今だけの楽しみ。しかも新茶には、リラクゼーション効果のあるテアニンも豊富なのだそう。
さらに、八十八夜(立春から数えて八十八日目前後。5月1日~3日頃。うるう年は、5月1日)に摘み取られたお茶を飲むと、無病息災、不老長寿になるという言い伝えも。そういえば、お茶をよく飲む静岡県の健康寿命は全国トップクラスだ。
お茶どころの静岡では、スイーツの楽しみもある。製茶問屋直営のお茶カフェがあると聞いて足を運んだのは、お茶とお茶スイーツで知られる「雅正庵」。上質なお茶とともにいただくお菓子は、ただ甘いだけじゃない、高級抹茶やほうじ茶本来のおいしさも味わうことができる、大人のスイーツ。甘さと抹茶のほろ苦さが口の中で調和して、なんとも贅沢な気持ちにさせてくれた。
雅正庵(千代田本店)
所在地 静岡市葵区千代田7-1-47
電話番号 054-267-3008
URL http://www.gasho-an.com/
春が旬というわけではないが、ぜひ食べたかったのが、とろろ汁。ふんわりとした食感は優しく素朴な風味だけれど、すりおろした自然薯は疲労回復に即効性があることから、昔から静岡では滋養強壮食として親しまれているのだそう。
そんなヘルシーな郷土食を味わうべく、創業1596年、14代続く「丁子屋」へ。広重の「東海道五十三次」にも、この店でとろろ汁を食べる旅人が描かれている老舗中の老舗だ。
店舗があるのは、かつて東海道五十三次の宿場町、鞠子宿があった場所。江戸からはるばる歩いてきた旅人たちも、ここでとろろ汁を食べ、旅の疲れを癒していたのだろうなぁ……と、昔に思いを馳せながら、麦ご飯にとろろ汁をたっぷりとかけていただく。口にした瞬間、香りがふんわりと広がって、なんとも優しいお味。
右:静岡産の自然薯と、自家製の味噌で作った味噌汁、厳選した卵をあわせたとろろ汁。主原料となる自然薯は、研究を重ね丁寧に栽培されたものだけを使う。
丁子屋
所在地 静岡市駿河区丸子7-10-10
電話番号 054-258-1066
URL http://www.chojiya.info/
2016.05.03(火)
文・撮影=芹澤和美