2日目は、ご利益を願って久能山東照宮へ

日本全国に数ある東照宮のなかでも最初に創建された、久能山東照宮。

 日本平ホテルを正午にチェックアウトし、向かったのは久能山東照宮。ホテルから徒歩10分の日本平山頂駅からロープウェイで5分と、アクセスもいい。ここは晩年を駿府(現在の静岡市)で過ごした徳川家康が1616年に亡くなった年、遺言により遺骸を埋葬し、その地に2代将軍秀忠により創建された神社。社殿は400年前の創建当時の姿がそのまま残っていることから、国宝にも指定されている。

久能山東照宮までは道路が延びていないため、アクセス方法は、日本平山頂駅からロープウェイで行くか、久能山麓から1159段の石段を昇るかのいずれかとなる。眼下に切り立った断崖からなる屏風谷を望みながら移動するロープウェイの車体は、徳川家のお駕篭をイメージ。

 当時最高の建築技術が結集した社殿は、極彩色の彫刻や絵がおみごと。ただただ美しさに見とれてしまうが、そこには、「命を大切に」「戦いをやめる」という家康公の伝言が彫刻で表されているのだという。彫刻に託された家康公のメッセージは、今を生きる私たちの心にもずしりと響く。

鮮やかな彫刻が施された拝殿。400年前の家康公のメッセージがそこに。

 久能山は風水でみると、富士山から流れる強い龍脈が駿河湾で逆流して石段を勢いよくかけ昇り巡回する「昇龍・回龍」の地形で、ここに参れば出世運や勝負運がアップするのだそう。たしかに、境内や石段からは駿河湾を一望できて、ここにいるだけでパワーをチャージできたような気分になれる。

本殿に描かれた唐獅子が鮮やか。華やかさの中に秘められた家康公の思いにも心が動かされる。

久能山東照宮
所在地 静岡市駿河区根古屋390
電話番号 054-237-2438
URL http://www.toshogu.or.jp/

 港では桜えびが揚がり、台地では新茶が薫る春の静岡。久能山東照宮ではいい「気」をたっぷりと浴びて、幸せな気分に包まれた2日間だった。東京までの帰路は、新幹線で約1時間と、うたた寝をしている間に到着。また思い立って、この街をぶらりと旅してみたいと思っている。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

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2016.05.03(火)
文・撮影=芹澤和美