探検隊気分で行く世界遺産の洞窟観賞

フォンニャ・ケバン国立公園の面積は、約8万6000へクタール。東京ドーム約1万8000個分にあたる。

前回紹介したフエからさらに北へ約220キロ。ラオスとの国境に位置するフォンニャ・ケバン国立公園は、地球の神秘と自然美に出会える場所だ。公園内には大小300にもおよぶ洞窟があり、うち4カ所が一般公開されている。

ほとんどが原生林に覆われ、多種多様な動植物が生息しているフォンニャ・ケバン国立公園。

 洞窟の見学は、専用ボートを利用する。船着場からソン川をボートに揺られること約30分。途中、川で水浴びするローカルの子どもたちとすれ違うプチクルーズを楽しみながら、「フォンニャ洞窟」に到着。

ソン川沿いに暮らす人々。都会では見ることができない風景にも、心が奪われる。

 ここから先は手漕ぎのボートに乗り換え、地底河川沿いに広がる洞窟の中を進んでゆく。中には広い空間があり、白い石灰岩からなる天井の下には、さまざまな形の鍾乳石がライトアップされている。まるで別世界に迷い込んだかのような景色に波を切る櫂の音だけが響き、神秘的な雰囲気。

手漕ぎ船で地底河川沿いに広がる洞窟を観賞。

 ボートで入り口から1キロ強の地点まで進んだところで、洞窟に上陸して散策する。天井から水がしたたり落ちるなか、さまざまな形に見える鍾乳石を見て回るのは、にわかに探検隊気分だ。

あるものは仏像に見えたり、あるものは鳥に見えたり。2億年以上も前から形成されている鍾乳石は見飽きることがない。

 この洞窟は、約2億5千万年前から形成され、15世紀には存在が知られていた。抗仏戦争とベトナム戦争中には、弾薬庫や臨時病院として利用されたこともあるという。

 専門家による本格的な調査が始まったのは、1990年になってからのこと。ハノイ国家大学とイギリス人の洞窟探検家との合同調査により、全長が7729メートルであることが分かり、現在もさらなる調査が進められている。

2016.05.06(金)
文・撮影=芹澤和美