探検隊気分で行く世界遺産の洞窟観賞
前回紹介したフエからさらに北へ約220キロ。ラオスとの国境に位置するフォンニャ・ケバン国立公園は、地球の神秘と自然美に出会える場所だ。公園内には大小300にもおよぶ洞窟があり、うち4カ所が一般公開されている。
洞窟の見学は、専用ボートを利用する。船着場からソン川をボートに揺られること約30分。途中、川で水浴びするローカルの子どもたちとすれ違うプチクルーズを楽しみながら、「フォンニャ洞窟」に到着。
ここから先は手漕ぎのボートに乗り換え、地底河川沿いに広がる洞窟の中を進んでゆく。中には広い空間があり、白い石灰岩からなる天井の下には、さまざまな形の鍾乳石がライトアップされている。まるで別世界に迷い込んだかのような景色に波を切る櫂の音だけが響き、神秘的な雰囲気。
ボートで入り口から1キロ強の地点まで進んだところで、洞窟に上陸して散策する。天井から水がしたたり落ちるなか、さまざまな形に見える鍾乳石を見て回るのは、にわかに探検隊気分だ。
この洞窟は、約2億5千万年前から形成され、15世紀には存在が知られていた。抗仏戦争とベトナム戦争中には、弾薬庫や臨時病院として利用されたこともあるという。
専門家による本格的な調査が始まったのは、1990年になってからのこと。ハノイ国家大学とイギリス人の洞窟探検家との合同調査により、全長が7729メートルであることが分かり、現在もさらなる調査が進められている。
2016.05.06(金)
文・撮影=芹澤和美