和菓子プランナーが提供する、ギャラリーカフェのような和菓子屋さん

和菓子薫風(東京・千駄木)
甘味:桜餅、白い羊羹、どら焼き

団子坂下から徒歩数分の路地に面した入口。杉玉が目印。

 千駄木の路地裏に佇む「和菓子薫風」は、今までの和菓子屋さんのイメージを覆す和菓子屋さんです。軒先に下がる「杉玉」は銘酒居酒屋のようで、木製の大テーブルをひとつだけ置いた店内はギャラリーカフェのよう。壁際にはどら焼きなどの和菓子や茶器が一見無造作に飾られ、「和」が強調されていません。さらに個性的なのは、和菓子を販売・提供するだけでなく、中国茶や日本酒を提供していること。

 「中国茶と日本酒に力を入れているのは、季節感があるから。和菓子とともに季節感を楽しんでいただきたい」と語る店主のつくださちこさんは、飲食企業やレストランのコンサルタントとして活躍する「和菓子プランナー」。かつては製薬会社に勤めていたものの、夜学で調理師の資格を取り、和・仏・伊などさまざまなジャンルの飲食店で研鑽を積み、独立した方です。

オーダーが入ってから作られる、道明寺製の「桜餅」540円。4月頃まで。

 店内で楽しめる和菓子は、定番が3種類と、季節の和菓子が3種類。季節の和菓子の中でこの時季に見逃せないのは、なんといっても道明寺製の「桜餅」です。

 とろけるように柔らかな口当たりは、つくりたてならでは。なんとこちらでは、オーダーが入ってから生地で餡を包んでいるのだそうです。桜の葉に包まれた道明寺は、葉っぱを剥がそうとするとお餅が吸い付いて取れにくいほどの柔らかさ。餡の中には、塩漬けの桜の葉を刻んだものが入っていて、あんこの甘さと塩気と桜の風味が、「春」を実感させてくれます。

白手芒いんげん豆でつくった白餡がべースの「白い羊羹」は、イートインで540円。持ち帰りは一棹4,320円。日持ちは2週間。

 定番は「白い羊羹」と「どら焼き」で、白い羊羹は白餡べースの生地に、クランベリー、ワイルドベリー、サルタナレーズンとオレンジピールを入れたもの。なめらかな口どけの羊羹をひとくち味わえば、上品な白餡の甘さと、甘酸っぱいドライフルーツのコクが広がります。おすすめの中国茶「阿里山 金萱茶」は、渋み、苦みが少なく、自然ですっきりした甘さ。透明感のある甘い香りが、「白い羊羹」と抜群の相性です。

2016.03.31(木)
文・撮影=小松めぐみ