進化させた冬の味「真鴨のロワイヤル」。真鴨を開きにして、熊、猪、鴨のミンチと熊の手をカットしたものを真鴨の肉で巻いた赤ワイン煮込み。 暖炉に火が入ると、フロア全体が暖かく、ゆったりとした時間が流れます。 レストランの隣に併設された解体処理場で吊るされていたのは猪の子ども。「狩猟シーズンも終わりなので、一緒に働いてくれた愛犬ハツのご褒美にと考えています」 きれいに処理された猪の頭部は、鮮度を保つマイナスの60度のスーパー冷凍庫で保管されます。 新鮮さが伝わってくる心臓、レバー。 ソースパンとともに厨房に吊るされていた鹿角とシャルキュトリ。 「春に生え替わったばかりの袋角は産毛に覆われていて触るとやわらかいんです」 鹿の袋角を輪切りにしてアルコールに漬けたもの。「漢方でも生薬として使われている袋角をアルコールに漬けてみました。どのような味になるのか、何に使うかは未定ですが、経過が楽しみです」 もはや定番となっている魚沼産蕎麦粉のガレット。冬は「猪ガレット」が登場。 コースの幕開けは3品のアミューズから。クロモジの枝で刺した「ジビエドッグ」。スプーンには「佐渡の毛蟹」。猪のリエットを詰めた「タルト」。 左からシャトー・ラヤスの「2010 コート・デュ・ローヌ」、山梨県の日本ワイン「ボーペイサージュ・ラ・モンターニュ 2022」、希少シャンパーニュ「ミニエール F&R アンフリュアンス ロゼ」。 佐渡産のボタンエビを使った「ボタンエビ ブイヤベース仕立て」。魚介のスープに欠かせないニンニク風味のマヨネーズ、ルイユを添えているのが心憎い。 3品目の「毛蟹 バターナッツ」。アクセントとして村上産のイクラとコシヒカリを使った米のパフをプラス。 秋から冬にかけて村上市の河川には鮭が遡上することで有名です。鮭の腹には海のルビーといわれる腹子(イクラ)がぎっしり。口の中でプチプチと弾けるイクラの旨みは、まさに冬の味。 4品目はシェフ自ら仕留めた猪を魚沼産蕎麦粉のガレットで巻いていただく「猪のガレット」。フォアジャンの新芽や天然のクレソン、味噌を煎った「糀屋団四郎」の鉄火味噌を重ね、下には葉ワサビのピクルスを敷いています。 山に同行してくれる猟犬ハツ。心強い相棒との連携プレイで鹿や猪、野兎などを仕留めることも。 5品目は「雪下の白菜」の石窯焼き。芳しい香りとともにお目見えしたのは、大橋保隆さんに特注したという鎚起銅器のソースパンです。 合わせたのは、ナッツのような香りと濃厚なミルクのような旨み、フルーティーな風味があるコンテチーズ。 コンテチーズを削りかけた「雪下の白菜」には、自家製黒にんにくのソース、黄色いワインといわれるヴァン・ジョーヌのソースを絡めていただきます。 6品目の「ラビオリコンソメ」。つるんとしてコシのあるラビオリの生地には阿賀野市「五頭山麓ひよころ鶏園」の放し飼いで育てた卵を使用。 7品目の「鹿の石窯焼き」には鹿節を塗したほうれん草を添えて。 厨房でほうれん草に火を通す井上シェフ。土地の恵みをそのまま提供するのではなく、素材そのものがもつポテンシャルを最大限に引き出した料理、シェフの探究心にほれぼれします。 鹿節は、塩蔵して干して長期保存。こちらはスネ肉の鹿節で3年ものだそう。 8品目は多彩なジビエを堪能できる「真鴨のロワイヤル」。佐渡産のビオレ・ソリエスをセミドライにし、キャラメリゼしたものをお肉の上に。黄色の彩りが映えるペーストの正体は、秋とは比べものにならない甘さの雪下にんじんです。 9品目の「熊アイス」。「越後姫」という新潟の苺と地元のビーツを合わせた赤いソースとグリーンの榧(カヤ)の葉のオイルでデザートに。 榧の葉をちぎると、グレープフルーツのような爽やかな香り。ほのかに森林を感じさせる落ち着く香りが広がります。この葉だけを摘んで、オイルと一緒に少し加熱。 10品目はフランスの家庭料理「リオレ」。黄色いパウダーは佐渡みかんの皮。深く鮮やかな赤色のハーブはアマランサスという季節のハーブで、ほのかな土の香りを感じさせてくれます。 左のプレート、急須、カップは、200年の伝統を受け継ぐ「玉川堂」の鎚起銅器。滑らかで美しい光沢を放つ花器とソースパンは「玉川堂」から独立した大橋保隆さんによる鎚起銅器。 銘木を知り尽くし、木彫の伝統技を駆使して作られた「マルナオ」のカトラリー。手触りや使い心地が最高だと定評があります。 優美な曲線と側面の曲がりが特徴の「ラッキーウッド」のカトラリーは、持ちやすさ、バランスもよく考慮されています。