積雪は3メートル以上。裏庭にある雪室から食材を取り出してきた「里山十帖」料理長の桑木野恵子さん。 古くは『日本書紀』にも記録が残されている雪室。「里山十帖」の雪室は稲わら葺きの仮設型で、それが自然と雪に覆われるという仕組み。 室内は温度2度前後、湿度90%以上という低温・高湿度をキープするため、保存する食材へ与えるストレスが抑えられます。 この日、雪室から取り出した食材は、カラフルなにんじんや大根、パースニップといった地元の根野菜や白菜など。 「里山十帖」の厨房の下にある「発酵部屋」。さまざまな食材がここで時間をかけておいしく発酵、乾燥、漬け込みされています。 棚には、春に採った姫竹(ネマガリダケ)や秋に収穫したキノコなど瓶詰めされた保存食もずらり。 春の山で収穫したワラビやウドは塩蔵しておき、塩抜きしてから調理に使います。 4品目の「保存と発酵」は、魚沼地域限定「純米酒 八海山 魚沼で候」とともに。 複雑で繊細。それでいて優しい味わいの「薬膳出汁」。 大切な人をもてなす「雪国のごちそう」は、清流にしかいないカジカをシンプルに素揚げしたもの。 歯応えのいい地元のにんじんを使った「雪室にんじん」。紫色のハーブは雪の中で摘んだタイムだそう。 春から仕込んだゼンマイは炊き直して信田巻きのように油揚げで巻いていきます。 「雪国の保存と発酵」(写真は2人分)。保存や発酵における長い時間もまた、調味の一種に。 春の山で採ってきた天然のウドは、採りたてをその日のうちに塩漬けにし、発酵部屋で貯蔵したもの。塩を抜き、味を入れてから提供される。 徳利に小さな盃を重ねることで雪だるまの形になるというユニークな酒器で供された燗酒は魚沼地域限定の「純米酒 八海山 魚沼で候」。 つきたての栃餅を使った腕もの「縄文時代から続く味」。 秋に収穫したナラタケは茹でてゴミを取り、真空の瓶で保存。 ペアリングは、地元、南魚沼市の青木酒造の純米無濾過「鶴齢 雪譜 特別純米 五百万石55」を香りが楽しめるブルゴーニュグラスにて。 彩りよくサラダのように仕立てた「ブリ大根」。みかんなどの柑橘系を焦がして乾燥させ、パウダーにしたものを仕上げにひと振り。 少しピリッとしたホースラディッシュのソースでいただく「ブリ大根」はオレンジワインとともに。 「干々」(写真は2人分)。左から猪の干し肉、干し芋と干し柿、乾燥ヤマドリダケと短角牛の煮凝り。 合わせたのは、厚みのある果実味とほどよい酸がある上品な飲み口の日本酒。地元、高千代酒造の「豊醇無盡たかちよ おりがらみ 壱火入れ 青」です。 通常の牛より赤身部分が多く、低脂肪・高タンパク質だという猪肉。ペアリングにはカーブドッチのどうぶつシリーズ「おうむ(ツヴァイゲルト)」を。 「猪」とともにいただく白菜と根野菜もまた冬の美味。 魚沼産コシヒカリをつやつやでふっくらと炊き上げたご飯。 額縁のような窓から見る白黒の景観はまるで水墨画。辺りの音が雪に吸収され、静寂な世界が広がっています。 デザートの「みかん」。焼きみかんの上にミルクのアイスクリームを乗せ、みかんの皮のパウダーでオレンジ色に薄化粧。 12月から4月にかけて辺りが雪に囲まれる「里山十帖」。白色の景観は清らかで風情があります。 源泉は大沢山温泉。宿に着いたら、まずは温泉に浸かり、冷えた体を温め、銀世界に浸りたいもの。北越の山々を一望できるはずの「里山十帖」の露天風呂ですが、今年は大雪で一面に覆われた雪に圧倒されます。