CREA2026年秋号の「1冊まるごと人生相談」特集が、現在好評発売中! CREA WEBではその一部を抜粋してご紹介します。

 日露戦争前夜から第二次世界大戦が題材の『地図と拳』や火星が舞台のSF『火星の女王』など、さまざまな時空の人間模様を描いてきた作家が、人間関係に悩む読者にアドバイス(全2回の1回目/続きを読む)。

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【相談】父親がどんどん偏屈になってきました

【お悩み】
もうすぐ70歳になる父親が年々偏屈になってきています。それと同時に、会うたびに「老い」も進み、弱っていく姿を本人も私も受け入れられずにいます。ささいなことで喧嘩も増えました。今までは特別関係が悪かったわけでもなく、育ててもらった感謝の念も愛情もあるのですが……。「自分がこんな風に老いていくのが怖いのかも」と漠然と思ったりします。(37歳・女性・プーアル茶)

 大学院を経てそのまま専業作家になった社会経験ゼロの僕みたいな若造が、他人の人生の相談を受けていいのか……といまだに悩み中です(苦笑)。ただ、「僕だったらこうする。こう考える」という話ならできる。参考になるかはわかりませんが、悩んでいる問題の捉え方を少し変えてみるきっかけにしてもらえたらな、と。

 この相談に関して言うと、お父さんの老いも偏屈も、正面から受け入れられないのはごく自然なことだと思います。自分の知っている父親とはどんどん違う人になっていくのを見るのが辛い、という気持ちはすごく分かる。かといって、他者である自分がそれをどうにかできるものではない。そのことに関して、まず諦める必要があるかなと思います。

 諦めたうえで、僕だったら父親が偏屈になっていく様子や老いていく姿を見て、自分が今後どうやって父親の年齢まで過ごしていくかの一つの指針にしますね。「データを収集する」って言うと冷たく聞こえるかもしれませんが、そういう関心の持ち方で接するのもありなんじゃないか。

 僕自身がまさに、そうやって人生を設計してきたところがあるんです。うちの父親は、めちゃくちゃ偏屈なんですよ。家族とか知人は全員、彼に迷惑を被ってきたんです。親って赤の他人とは違って、その血が自分にも流れているじゃないですか。父を見ながら、もしかして自分も偏屈な人になってしまうんじゃないかという不安は子どもの頃からありました。だからこそ、父親の偏屈な部分とか嫌いだなと思う部分を観察して、勉強の素材にしてきたんです。

 相談者さんにとってお父さんは、人は老いたらどうなるのかを一番間近で見られる存在。それを見せてもらえることで、老いへの心の準備ができるかもしれない。「データを収集する」モードになることの何がいいかと言うと、気がラクになるんですよ。今自分はこの人から学習をしていて、人間として大きくなっている最中なんだと感じられるようになる。対人関係における心の持ちようとしても、意外と汎用性が高いんじゃないかなと思うんです。

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CREA 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。