今年2月末から続く、アメリカとイスラエル、そしてイランの攻撃の応酬。6月中旬には一度停戦合意に署名したものの、その後合意は決裂。7月11日にはイラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡の封鎖」を宣言した。
ホルムズ海峡の不安定化により、火力発電に使うLNG(液化天然ガス)の供給不足が危惧されている。酷暑に続き残暑と、このまま消費電力が増えていった場合、生活者目線では何が変わるのか――。エネルギー専門家であるポスト石油戦略研究所の大場紀章さんに聞いた。
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LNGは世界中で奪い合いに
――ホルムズ海峡の不安定な状態が続くことで、今後、値上げが懸念される商品や燃料はありますか。
あるとすれば、じつは夏よりも、冬にかけての電気代です。年々厳しさを増す酷暑により、日本では「夏の電力不足」が注目されがちですが、ここ5~10年でその状況はだいぶ変わりました。太陽光発電が増えたこと、冬の暖房器具が灯油ストーブからエアコンに変わってきたことで、電力消費のパターンが変化したのです。
昔は夏のエアコンが電力消費のピークでしたが、最近は冬に灯油ストーブを使う家庭が減り、代わりにエアコンによる暖房を使うようになった。冬の電力消費のほうが課題になってきたのです。太陽光発電は昼間に発電しますが、冬は日が落ちて寒くなってくると、どの家庭も一斉にエアコン(暖房)のスイッチを入れます。日照時間が短くなり、太陽光による発電量が減る頃にこうした需要が急増するため、昔と比べて冬の夕方の需給が厳しくなっているのです。
さらに、ホルムズ海峡では石油だけでなくガスも精製・輸出されています。世界で流通しているLNG(液化天然ガス)の20%がホルムズ海峡を経由して輸出されていましたが、それもずっと止まったまま。石油と違い、日本にはガスの備蓄がありません。今、ヨーロッパでは来年の冬に備えるためのガスの蓄えを抑えていますが、このまま封鎖が長引くと、冬を乗り切るだけのガスが足りなくなる可能性があります。もしこの状態で冬に寒波が世界を襲うと、電気代のリスクはかなり高くなります。
封鎖が続けばLNGは世界中で奪い合いになります。中東から買っているかどうかは関係なく、ヨーロッパで値段が上がれば、火力発電の多くでLNGを燃料として使っている日本でも電気代が上がります。
――一方、ナフサの供給が不安定になったことで自治体指定のゴミ袋の買いだめが起きたり、インクの不足により食品パッケージが白黒になるといったこともありましたが、その点はいかがでしょうか。
そうですね。原油から精製されるナフサも一度は供給不足が話題になりましたが、現在は落ち着きはじめ、個別の商品が足りないという声自体は収束してきています。パッケージの印刷を減らした事業者も今、元に戻し始めていますので、そういった不足問題も解消しつつあります。
これは買いだめしておいたほうがいい、というものは基本的にありません。例年どおりの購買行動をすることが、社会にとっては一番良いと考えています。
