「うちの子、スキー行きまんねん」
コシノ そのまま、岸和田の商店街を連れ回して、知ってる店に一軒一軒立ち寄って、「うちの子、今からスキー行きまんねん。この洋服、私が作ったんやけど、可愛いやろ」って自慢するんですよ。
近田 想像すると笑っちゃいますね(笑)。
コシノ こっちは、雪山でもないのにタートルネックのセーター着て、借り物の靴がブカブカだから靴下も重ねて穿いて、暑くって汗でびしょびしょですよ。
近田 スキー用のでっかい靴で街を歩くって考えるだけで、くたびれちゃいますね。
コシノ その格好で、二人して“南海電車”に乗りましたよ。
近田 訪問着とスキーウェアの母子って、明らかに異様ですよ(笑)。
コシノ そして、待ち合わせ場所の湊町駅に着いたら、お母ちゃんがどこかに行っちゃった。しばらくすると、両手に寿司折をたくさん持って帰ってきた。一緒に合宿に出かけるみんなに、「うちの子はどんくさいからコケたりして危ないと思います。その時はよろしゅう頼んます」って言って寿司折を配り出したんですよ。
近田 そんな親御さん、他にもいました?
コシノ もちろんいませんよ。あれは恥ずかしかった。
近田 しかし、従順なお子さんだったんですね。
コシノ お母ちゃんの言うことは必ず聞かんとあかんっていうくらい、素直な子どもだったんですよ。ただ、洋装店の跡を継ぐのだけは嫌だった。小さい頃から、絵描きになりたかったんです。
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コシノヒロコ(こしの・ひろこ)
1937年、大阪府岸和田市生まれ。文化服装学院在学中に日本デザイナー協会デザインコンクールで1位を受賞。1960年に自身のブランドを設立し、1964年には大阪・心斎橋にオートクチュール・アトリエを開設する。1978年には日本人として初めてローマのアルタ・モーダに参加し、その後、パリ、上海など世界各地でコレクションを発表。1997年には毎日ファッション大賞、2001年には大阪芸術賞を受賞。「HIROKO KOSHINO」など複数のブランドのデザインを手がける他、近年ではアーティストとしての活動にも注力し、国内外での個展を多数開催。三味線や邦楽の演奏をはじめ、絵画、墨絵、陶芸など多彩な表現活動を継続している。
近田春夫(ちかだ・はるお)
1951年東京都世田谷区出身。慶應義塾大学文学部中退。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。その後、ロック、ヒップホップ、トランスなど、最先端のジャンルで創作を続ける。文筆家としては、「週刊文春」誌上でJポップ時評「考えるヒット」を24年にわたって連載した。著書に、『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』『グループサウンズ』(文春新書)などがある。最新刊は、半世紀を超えるキャリアを総覧する『未体験白書』(シンコーミュージック・エンタテイメント)。
X @ChikadaHaruo
(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―
開催時期:2026年5月26日(火)~7月26日(日)
開催場所:東京都現代美術館 企画展示室B2
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(7月20日は開館)、7月21日
観覧料:大人2,200円
https://hirokokoshino.com/unknown/
