ただ馬を養っているだけではない

 現在、珠洲ホースパークで繋養されているサラブレッドは七頭(他にポニーが一頭いる)。かつてはJRAの重賞戦線を賑わせたような馬もいる。

 少しずつ施設を充実させて、もっと多くの馬を繋養できるようにしたいと角居さんはおっしゃった。

 実際、牧場の敷地内では新しい厩舎の建設が進んでいた。日本財団などの支援を受けて、敷地内にキャンプ場を作る予定もあるとか。

 珠洲ホースパークはただ馬を養っているだけではない。角居さんは「馬が自分で稼いで自分の居場所を作る」という思いを抱いている。

 そのためには乗馬をやらせたり、ホースセラピーに参加したりと馬が稼げる状況を作らなければならないのだ。

 珠洲ホースパークでも、珠洲市民、小学生以下の児童、そして角居さんが設立したみんなの馬という団体の会員以外からは、千円の入場料をいただいている。

「東日本大震災の時、なにもかもを失って生きる気力をなくした人が、津波で牧場から流された馬たちが、今はのんびりと草を食んでいる姿を毎日見てる内に心が和んで再び生きる気力が湧いてきたということがあったらしいんですよ。それを珠洲市の役所の方に話したら、この土地を貸してもらえることになったんですよね」

 と角居さんは言う。

「その話、よくわかります」

 とわたしは答えた。夏の間、北海道の浦河に滞在しているとき、わけもなく放牧地で草を食んでいる馬たちを眺めることがある。馬たちは滅多に走らない。ただただ、草を食んでいる。それを見ているだけなのに、なぜか飽きないのだ。いつまでも見ていられる。

 緑豊かな大自然の中で、平和に草を食んでいる馬を見ていると、仕事やら人間関係やらに煩わされている人間が愚か極まりない生き物に思えてくる。

「能登の震災被災者たちにももっと馬と触れあってもらいたいんですけど、中々ねえ」

 角居さんは少し寂しそうに微笑んだ。

 珠洲ホースパークの話を聞いた後は、競馬談義で時間が流れた。

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