灯台巡りの後に向かった先

 夜は金沢市内の居酒屋へ。席に着き、飲み物やつまみを注文してしばらくすると、店の大将がカニしゃぶ用に仕入れたズワイガニを披露しに来てくれた。

「で、でかっ!」

 これほど大きなズワイガニは見たことがない。今季の北陸はズワイガニがあまり獲れないのだと聞く。大将が頑張って仕入れてくれたのだ。

 値段のことは聞くまい、気にするまい。今宵はカニしゃぶを心ゆくまで堪能するのみ。

 大将が捌いたカニの足を出汁にさっとくぐらせてポン酢につけてしゃぶりつく。

 ああ、美味い。美味すぎる。

 あれだけ大きかったカニは瞬く間になくなり、味噌は甲羅に出汁と酒と米をぶっ込んでおじやにしていただく。

 もう死んでもいいと本気で思った。

 灯台巡りの旅は本来、ここで終わりだが、我々は翌日、能登半島の北、珠洲市へ向かった。

 珠洲市には元JRA(日本中央競馬会)のトップ調教師だった角居勝彦さんが経営する珠洲ホースパークという養老牧場がある。せっかく石川県に来たのだから、そこも訪ねてみようということになったのだ。

 養老牧場というのは現役を引退したサラブレッドを繋養する牧場のことだ。サラブレッドの競走は過酷だ。勝ち上がってダービーなどの大レースに出走できるようになる馬はほんの一握り。大半は競馬ヒエラルキーの頂点まで辿り着けずに脱落する。

 牝馬は生まれた牧場に戻って母になるというセカンドキャリアが用意されることが多いが、牡馬はほとんどが肉にされる。あなたが食べる馬刺しや、ペットフードに含まれる馬肉は、サラブレッドのものであることが多いのだ。

 競馬に携わる人間はサラブレッドに食べさせてもらっている。それなのに、走らなかったからといってただ死なせるだけでいいのか。

 そういう機運がここ数年高まっていて、角居さんの養老牧場も、その一環にある。

 金沢から珠洲まで向かう高速道は、途中までは快適だったが、やがて、大地震の爪痕があちこちに現れるようになった。

 能登はまだ復興の途上にある。

 ホースパークの駐車場も、アスファルトのあちこちにひびが入っている。後で聞いた話だと、修繕する余裕も時間もないということだった。

 小雨のぱらつく中、角居さんが外まで出てきて我々を歓迎してくれた。

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