歴史と伝統を受け継ぎ新たな道を
ヤマト醤油味噌に到着してびっくり。醤油の蔵元というより、醤油のテーマパークではないか。その名も、ヤマト・糀パーク。広い売店はもちろん、食堂やカフェも併設されており、醤油の仕込みを体験することもできる。
話をしてくれる営業部長の到着を待つ間、まずは売店をうろつき回る。幾種類もの醤油、魚醤、魚醤をベースにした出汁、味噌、煎餅にスイーツと品揃えも豊富だ。
醤油や出汁などは試飲もさせてくれる。
さっそく、最高級醤油の「ひしほ」といしるを使った「いしるだし」を試飲。
美味い。醤油を美味いと思ったのはいつ以来か。子供の頃はこういう醤油が普通にあったように思う。
大量生産時代に突入して、世界でなにかが変わってしまったのだ。
わたしはスコットランドのシングルモルトウイスキーが好きで、毎晩飲んでいるのだが、このシングルモルトも一九八〇年を境にそれ以前と以降では味がまったく違う。それ以前は家内制手工業品だったものが、大量生産によるビッグビジネスに変わってしまったのだ。
どちらが滋味深いかは言うまでもない。
いくら昔のウイスキーを飲みたいと思っても、もう作っていないのだからどうにもならない。たまにネットで見かけても目の玉が飛び出るような価格がついている。
失われたものは二度と戻らない。しかし、醤油や味噌は頑張っている蔵元が残っているので、今でも昔ながらのものを入手できるのだからありがたい。
醤油、味噌、出汁などを買ってほくほくしていると、仕事先から営業部長が戻ってきた。想像していたのよりはずっと若い方であることに驚きながら挨拶を交わす。
山本耕平営業部長は、ゆくゆくはヤマト醤油味噌の五代目社長になる人だ。
ヤマト醤油味噌の創業は明治四十四年。百年以上に亘って続く老舗だ。初代は北前船の船乗りで、北海道で醤油や味噌を売っていたという。二代目で醤油、三代目で味噌の製造を行うようになり、今の四代目社長が営業部長のお父上。工場長が叔父上だという。
やはり北前船なのだ。初代の乗っていた船も、灯竿の明かりを頼りに帰港していたのだろうなあ。
