消えかけた洋館が守られた奇跡

 旧尾崎テオドラ邸は、今でこそ多くの人が訪れているけれど、2020年ごろは取り壊しの危機にあったという。

  保存のきっかけを作ったのは、漫画家の山下和美さん。世田谷八幡へ参拝する途中、偶然この洋館を見つけ、強く心を惹かれたのだとか。

 そんな洋館が取り壊されるという話を聞いた山下さんが保存を呼びかけたことをきっかけに、漫画家たちの協力も集まり、保存プロジェクトが動き出した。

 地元の人たちからも「旧尾崎テオドラ邸を当時のまま残してほしい」という声があったが、当時の建物は、窓ガラスが割れ、壁も剥がれ、老朽化が進んでいたという。できる限り当時の姿を生かすため、丁寧な修復が重ねられたが、途中で資金不足に直面し、クラウドファンディングもおこなわれたそう。

 現在、旧尾崎テオドラ邸の2階はギャラリーとして使われ、常時漫画の展覧会が開催されている。

 紙の原画そのものが残りにくくなっている今、手描きの線や、作家が残した小さなメモまで見られる場所は、とても貴重なのだとか。

 失われかけた洋館で、失われつつある手描きの原画を展示する——この場所そのものが、時代のなかで消えそうになるものを、そっとつなぎとめているように感じられた。

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