生配信サービス「TwitCasting」の人気ホラーチャンネル「禍話(まがばなし)」。今年で放送開始10周年を迎えた同番組は、軽妙なトークが武器の語り手・かぁなっきさんが紡ぐ、聴いた者の背筋を凍らせる珠玉の怪談たちがその魅力です。

 今回はそんな禍話から、奇妙な名前のついた曰く付きの心霊スポットを訪れた大学生たちに降りかかる恐怖を描き、YouTubeで映像化もされた名作「アイスの森」をご紹介します――。

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心霊スポットに連れて行ってくれるO先輩

「O先輩ももうすぐ卒業かぁ~」

 寒かった冬も終わりに近づいた頃。Tさんは大学の部室で黒い合皮がところどころ剥がれかけたソファに腰掛けながら、同級生のYさんにそう漏らしました。

「そうだなぁ。地元での就職ならまた会えるけど、就職先は東京みたいだしな」

「……」

 手に持っていたゴム製ボールをポンポンと手の平で跳ねさせながら、Tさんは友人の問いに答えずにいました。

「卒業飲みの場所、Iちゃんが隣町のちょっと広くていいところ提案してくれたんだけど、お前もそこでいいだろ?」

「うん……」

「めっちゃ寂しがってるじゃん。そんなんじゃお前……痛って! おい、なんだよ」

 からかうYさんに腹が立ち、Tさんはゴムボールをぶつけながら体を起こしました。

「なんかさぁー、酒飲んでハイおしまいっていうのも違う感じするんだよなぁ」

「まあ、確かに……。先輩とは飲み会よりも心霊スポットとかに連れて行ってくれたことの方が思い出深いもんね」

「あんま怖い体験できなかったけどなぁ」

「いつもいきなり夜中に行くことになるから、『暗ぇ』とか『寒ぃ』とか言って、写真撮って帰るだけだったよな」

 Yさんはぶつけられたボールをポンと投げ返しながら、思い出を辿るように天井をぼんやり眺めていました。

「はは、それな。それでもさ、ああいう場所に連れてってくれるのはO先輩だけだったよ」

「俺らだけだったら、あそこまで行動力なかったよな」

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