「それなら私も産めたのに」同業者に冗談っぽく言われることも

アグネス 2人目の子どもを出産して、やはり子連れで職場復帰した時のことです。当時のマネージャーが男性だったので、歌番組の音合わせなどの時には、同行してくれていた親戚に子どもの面倒を見てもらうようにしていました。

 親戚がトイレに行っている間マネージャーが子どもの面倒を見ることになり、彼が息子を抱えながら、バンドに譜面を配ったことがありました。それを見た先輩女性歌手の方が、「どこでこんないい人を見つけたの? こういうマネージャーがいたら私も産めたのに」と冗談っぽく言ったことがありました。

上野 子どもを抱えた男性が仕事場にいるなんて考えられないという時代だったということを物語っていますね。

アグネス 先輩女性歌手の方の心の中に、若い頃に仕事をするために、結婚も母親になるのもあきらめざるを得なかったという、一抹の寂しさがあるのを感じとって胸が苦しくなりました。

上野 仕事の成功と引き換えにした女性としての幸せがあったと。

アグネス アグネス論争以降、その空気が変わったと感じています。芸能界では、子連れで楽屋入りしてもいいという空気感が生まれていました。MEGUMIさんとか三船美佳さん、原日出子さんといった若い世代のタレントさんは子どもをテレビ局などに連れてくることができました。「アグネスさんのおかげで仕事を続けながら子育てをすることができました」と言われました。

 今では母親になったことを活かして発信するママさんタレントも大勢います。アイドルも女優さんも演歌歌手も、母親になってマイナスになることがないようになり、アグネス論争には意味があったんだと私は思えるようになりました。

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