竹の種類を増やした

 対策の1つとして、上野動物園はパンダたちに与える竹を見直した。シャンシャンと双子は竹の選り好みが強い。同園はパンダの母子の飼育経験が限られていたこともあり、シャンシャンの選り好みの強さは当初、個体差だと考えていたが、双子も選り好みが強かった。

 そこで飼育担当者が竹の採取地を訪れ、パンダがどのような竹を好むか、竹を切る人たちに直接伝えた。パンダに与えた竹の量とパンダが食べた量もフィードバックし、並行して、新たな採取地の開拓を進めた。パンダの好みは季節などで変わることがあり、それらを安定して採取できるようにするためだ。

 パンダに与える竹の種類も増やした。従来は主にモウソウチク(孟宗竹)、マダケ(真竹)、シノダケ(篠竹)を与えてきたが、2025年からシホウチク(四方竹)、リョクチク(緑竹)、スホウチク(蘇芳竹)を追加。同年10月時点で、双子はシホウチクを特に好んで食べており、成果が少しずつ現れている。

 「こうした取り組みの結果、歩き回りが大きく減ったとは言えませんが、単調になりがちな時間帯にも、行動のバリエーションが広がる場面が見られるようになりました」と石神さんは手ごたえを語った。

シャオシャオがレイレイを訪問?

 一方で、竹の選り好みと歩き回りへの対策というわけではないが、パンダがさまざまな行動ができるように、放飼場にも工夫をこらしていた。例えば屋外放飼場は、パンダの運動不足を防ぐため、起伏に富んでいる。パンダが登ったり、休息したりすることができる複数のやぐらも建てた。(参照:上野の双子パンダが新たなステップへ 巨大やぐらでの昼寝…これまでとひと 味違う可愛い姿を観られる日が近い?)。

 西園パンダ舎で最も広い放飼場には、ほら穴があり、たくさんの樹木が植えられている。ここは最初、リーリーが使い、リーリーが中国へ帰るとシャオシャオが使った。2025年後半の筆者の観覧時、シャオシャオは、観覧エリアから見て左の扉の前にいることが多かった。扉や周辺をドンドンと叩くこともあった。

 この扉は、レイレイが使っている部屋と直結しており、あいだに職員用の通路などはない。そのためファンの間で「レイレイ宅を訪問」と話題になった。扉の向こう側はシャオシャオから見えないが、パンダは嗅覚が優れている。シャオシャオは、レイレイがいると分かっていたのだろうか。2026年1月に取材すると、「レイレイまたは同種が近くにいる、もしくは部屋があると認識している、と判断しています」(上野動物園教育普及係)とのことだった。

 この放飼場では現在、工事が行われている。上野動物園によると「木製のやぐら状の工作物」をつくり、既存のやぐらの隣に設置するという。設置予定の場所には、シャオシャオが既存のやぐらとの行き来に使っていたはしごがあり、このはしごは撤去。次のパンダの来園は決まっていないものの、飼育に向けて、パンダがいない間に、放飼場の直したい箇所に対処しておき、「飼育環境の向上を目指します」(金子美香子副園長)とのことだ。

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中川 美帆(なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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