子宮全摘が最善のケースとは

 手術になった場合、最初に考えるべきことは、これからの人生で妊娠・出産を希望するかどうか。

「妊娠を希望する場合、子宮を残して筋腫のみを摘出する『筋腫核出術』が選択肢ですが、筋腫を取っても残存や再発のリスクがあり、術後半年は妊娠を避ける必要があるため、手術時期の見極めがとても大切です。また、主治医の経験値による感覚にはなりますが、筋腫の位置や大きさが着床や妊娠に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断した場合には、無症状でも筋腫核出術を薦めることがあります」

 将来的にも妊娠を望まない、すでに出産を終えている、また筋腫の数が非常に多いなどのケースでは、『子宮全摘術』が最善の選択肢になるという。

「再発のことを考えれば、子宮全体を摘出したほうがいいという判断になります。子宮を取ることに抵抗がある方もいると思いますが、術後の痛みも筋腫核出術よりは少なく、卵巣が残っていれば更年期症状が早まることもありません。手術を受けた方からは、つらい症状から解放されてすっきりしたという声が圧倒的に多いです

筋腫が妊娠の妨げになる!?

 子宮筋腫は命をおびやかす病気ではないけれど、これからの人生で妊娠・出産を考えている人は特に、将来の妊娠に向けたプレコンセプションケアの一環として子宮筋腫の有無を知っておきたい。

「子宮筋腫の好発年齢は30代後半~40代前半と言われています。最近では、この年代で出産を終えていない女性が多く、たとえば体外受精を行う場合でも、子宮筋腫が原因で採卵や胚移植が上手くいかないケースも少なくありません

 その場合、筋腫核出術で筋腫を摘出してから妊娠を目指すことになりますが、術後半年は子宮を休ませる必要があるため、術前治療期間と合わせて1年近くを棒に振るリスクもあり、妊娠適齢期を逃すことにもなりかねません。

 また、子宮全体が臍の高さ以上になるまで筋腫が育った状態では、傷の小さな腹腔鏡手術やロボット手術を受けることが難しくなるため、開腹手術一択になってしまいます」

 未来の自分が後悔しないためにも、定期的に検診を受けて自分の体を知っておくことが重要だ。

「早めに子宮筋腫がわかっていれば、最適なタイミングで低侵襲な手術が受けられます。体外受精を行う場合は受精卵を術前に凍結しておくなどのオプションも適用可能となります。妊娠・出産をするか否かは人生における大切な要素。忙しさを言い訳にせず、今の時代だからこそ叶う治療を選択して、仕事も子どももあきらめる事なく、充実した生活を送りましょう」

◆子宮筋腫と診断されたらどんな選択肢がある?

 どんな治療法が自分に合っているか、チャートで治療の選択肢の目安を知りましょう。

●お話を聞いたのは……

産婦人科医 北出真理(きたで・まり)先生

順天堂大学産婦人科学講座教授。2017年に順天堂大学に開設された、女性低侵襲外科・リプロダクションセンターでセンター長も務める。同センターでは、身体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット手術、最先端の不妊治療を強みとしており、子宮筋腫に対する腹腔鏡手術件数は国内有数。

CREA 2026年冬号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。