オーロラを上手に撮影するコツ 番外編
「オーロラが見られなかった時のお楽しみ」

リンゲンフィヨルド・アドベンチャーではサーメのルアードさん一家が民族衣装で出迎えてくれた。

 オーロラが出るか出ないかは誰にもわからない。地元の人のデータをもとに行動し、オーロラ運を天にまかせるしかないのだ。しかし、オーロラを見ることができなかったと落胆してノルウェーを去るべからず。そんな時の楽しみ方、ノルウェー編を紹介しておく。

犬ぞりはそりに座って乗る人とそりの後ろで犬を進め、止まれ、左右に曲がれなど指示を出す人と2人組で乗るのが一般的。

 1つ目は犬ぞり。これは犬をかわいそうに思う人がいるかもしれないが、犬ぞりの犬は走りたくてうずうずしていることを念頭に楽しむこと。彼らは訓練されたプロフェッショナルである。

サーメ式のテント、ラヴォ。中はとても暖かいので、結露しないよう、カメラ機材を持ち込まないように。

 2つ目はサーメの文化に触れること。彼らのカラフルな衣装や極寒地で生きていく生活の知恵などを知るのも勉強になる。

左:ソマロイ アークティック スカンディック パートナーの客室はキッチン付き。
右:同ホテルのレストランは青を基調とし、家具から食器まで北欧デザイン。
同ホテルの前のボート置き場。朝陽が反射して水面をピンクに染める時間。

 3つ目はホテルライフ。ノルウェーのホテルはシンプルなデザインの部屋が多いが、とても快適にできている。寒い冬を部屋の中ですごす時間が多いため、日光を多く取り入れる工夫や温かみを感じさせる北欧デザインの家具も素敵である。

左:イチゴがのった巻きずし。サーモンとイチゴのマッチングは意外と美味しい。日本の寿司屋さんでは絶対にないメニューだと思う。
右:トロムソ市内にある「RA Sushi & Bar」。日本で修業したというスペイン人シェフが自慢のノルウェーサーモンを見せてくれた。

 4つ目はグルメ。ノルウェーといえばサーモン。最近では日本で修業してきたノルウェー人が開いた寿司屋さんもある。サーモンだけでなくキングクラブという大きなカニも美味しい。カニ漁の船に乗るツアーもあるが、かなり揺れるので船酔いしない人ならオススメ。

左:キングクラブの豊漁を喜ぶヴィダル・カールスタッド船長。
右:採れ立てのキングクラブを塩茹でして、レモンを搾って食べる。

 また、夜中にマイナス40度を体験するのも人生の醍醐味である(急に空気を吸い込むと咳き込むぐらい冷たいから少しずつ吸ってね)。

エルスフィヨルドポイントはオーロラが出なくても素敵な場所。静寂を味わえる。

 運よくオーロラ撮影ができたら、次回の旅では撮影せずにじっくりと見ることだけに集中してほしい。

 撮影に気を取られてオーロラそのものを楽しんでいない人が多く、心に焼き付けることを忘れて帰国する。私たち仕事で撮影しなければならないカメラマンは別として、楽しむことも忘れずに。私の夢はカメラを持たずにオーロラを見に行くこと。しかし……たぶん無理。根っからの撮影マニアだから!(笑)

 以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。

山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作るサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。

Column

山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方

山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

2016.02.21(日)
文・撮影=山口規子