神戸市中央区。栄町通と海岸通の間に伸びる東西約800メートルの乙仲(おつなか)通には、古いビルが残っていて、カフェや飲食店、ブティックや雑貨店、本屋など、小さくて個性的なお店や作家のアトリエが点在しています。気になるお店をのぞいたり、お茶をしながら、散策するのが楽しいエリア。

外国の街角を思わせるキュートな外観。
ディスプレイも素敵。

 「アンダーグラウンド ベーカリー」は、そんな通りに2015年10月4日にオープン。目立つ色合いで印象的な外観です。アンティークショップのようなウインドウを眺めて中に入ると、店内はちょっと薄暗くて、まるでロンドンの街にあるお店に迷い込んだかのよう。

 「1930年代のロンドン地下鉄の車両の色をイメージしたんです」と、手井梨恵さん。

手作りの焼き菓子。右下から時計まわりに「くるみとクリームチーズのスコーン」、「ロックケーキ」、「アイリッシュ・ブラウンスコーン」、「パン屋さんのスコーン」、「ティールームスコーン」まん中のものと2個。
オーナーの手井梨恵さん。

 兵庫県姫路市出身の手井さんは、本の中に出てくるお菓子に憧れ、小学6年生の頃から、お菓子を作るようになったのだそう。高校生の時、スコーンに関するエッセイを読んで「スコーンを食べにイギリスに行く!」と決心。東京の大学に入って、交換留学でイギリスへ。「本場のスコーンを食べて、ますますイギリスが好きになりました」。

 大学卒業後は、東京の紅茶と食器を扱う会社で働きます。その頃も、色々なお店でスコーンを食べ歩いたり、自分で作ったり。そのうち、イギリスとスコーンへの思いがますます強くなり、「イギリスでお菓子作りを学びたい」と、会社を辞めてイギリスの大学のベイキングコースに入学。28歳の時でした。

 第1回目の講義が、スコーンの作り方。「粉を生かすことが大切だと知りました」。そのレシピを元にしたのが、お店の看板商品である「パン屋さんのスコーン」です。2年間、イギリスのお菓子を学んだ後、台湾・台北の会社が営むティールームでお菓子作りを担当。2014年に帰国して、自分でお店を始めようと決心。神戸で、イギリスの雰囲気たっぷりの小さなお店を始めました。

「パン屋さんのスコーン」150円。

 「イギリスの地下鉄で通勤や通学をする途中に、立ち寄るお店のイメージ。ママのキッチンをのぞくみたいに、その日のおやつを買いに来てもらいたいんです」と手井さん。

 古い分銅のはかりや菓子型に並べられたり、可愛いビスケットの箱に入れられたお菓子は、毎日10~14種類。すべて手井さんの手作りです。

「スコーンは、粉がメインのお菓子。日本では、イギリスと粉そのものが違うので、同じ味を再現することはできませんが、できるだけ近づけたい」

2015.12.13(日)
文・撮影=そおだよおこ