ここ数年、体質改善に努めた結果……

 昨年の暮れに、福井にアトリエを構えると決めたことで、東京での暮らし方についてもあらためて考えるようになりました。

『雉猫心中』井上荒野・著/松尾たいこ・イラスト(マガジンハウス)から。

 東京ではその頃、目黒のテラスハウスに住んでいました。一戸建て風の4軒が繋がっていて、2軒ずつで庭を共有する形です。1981年築と古いけれど、著名な建築家が設計した建物はコンクリート打ちっ放しでクールな外観。3階建てに見えるけれど、半地下から始まって、中は5層に分かれていて大きなガラスがはめこまれている、ちょっと変わった建物です。おもしろそうだなということで住み始めました。それまでは、1~2年で引っ越していましたが、特に不満もないまま気がつけば8年が経っていました。

 8年前、私たちが家に求めていたのは「環境」と「広さ」でした。だから、緑が多い閑静な住宅街というのが一番の決め手。体が弱かったこともあり、移動はタクシーと割り切っていたので駅から遠いことも気にしていませんでした。そして、夫婦二人とも自宅を仕事場にしているので、広い方が気持ちにもゆとりができると考えていました。

 でも、ここ数年、体質改善のために夫と一緒に断食施設に通ったり、食生活や健康面に気をつけるようになり、そのおかげで、元気になって公共交通機関を使うようになると、駅から徒歩20分という距離には、不便を感じるようになりました。

私のアトリエ。引っ越しの夜には全て片付けてこの状態。

 そしてリビングとダイニング以外に5つも部屋があるこの家も持て余し気味に。私は元々断捨離好きで、家の中にはなるべくモノを置かず、スッキリした印象になるよう心がけていました。時々、雑誌などのインテリアや収納特集の取材を受けることもあるのですが、みなさん「モノが少ない」と驚かれます(ちなみに夫は私の何倍も綺麗好き&モノを持っていません。いらないモノはすぐに処分してしまいます)。

 軽井沢の家は、吹き抜けのある2階建て、3LDK。こちらに移動すると、本当にスッキリしていて広さも手頃で落ち着くんですよね。ちゃんと家の中を把握できている感じがするというか。だから東京に戻るたびに「モノが多いな~」と思ってすごく片付けたくなり、さらにモノが減っていきました。

2015.11.14(土)
文・撮影=松尾たいこ